長崎県知事選挙をめぐる告発状を地検が受理 弁護士の郷原氏が指摘する選挙資金の問題点とは?選挙管理アドバイザーの小島氏が公選法について解説

2022年2月に行われた長崎県知事選挙は知事選挙としては異例の大接戦となり、約500票差で新人の大石賢吾氏が当選しました。しかし、その8カ月後に大石陣営の出納責任者から選挙コンサルティング会社社長らに支払われた400万円余りが本来は無報酬であるはずの選挙運動への対価だったなどとして、弁護士の郷原信郎氏らが公職選挙法違反の疑いで告発状を長崎地検に提出しました。

全国で後を絶たない「選挙とカネ」の問題に潜む根本的な課題や、選挙関係者が気を付けるべきポイントとは……選挙ドットコム編集部が有識者に疑問をぶつけました。

郷原弁護士が語る「事件の内容」と「選挙コンサルのあり方」とは

今回の件について告発した元東京地検検事の郷原信郎弁護士に告発に至る経緯や、現代の選挙に対する問題意識を聞きました。

弁護士・郷原信郎氏

郷原氏が告発に踏み切った理由とは

選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
今回の事件に着目した理由を教えてください。

郷原信郎弁護士(以下、郷原氏):
今回の事件については、選挙が終わった後に長崎県内の政治団体が告発状を長崎県警に提出していました。その後、その政治団体の方から書面が私に送られてきたので内容を確認したところ、大石陣営から選挙コンサルティング会社J社に対して約402万円の支払いの記載があり、そこに疑問を抱きました。

編集部:
大きな金額ですね。具体的にはどのような支出だったのでしょうか。

郷原氏:
支払い目的が「電話料金」と記載されていましたが、J社は選挙コンサルティングを主な業務として行っており、定款には電話サービスを行っているような記載はありませんでした。神戸学院大学の上脇博之教授に連絡をとったところ、選挙に関わる収支報告書の情報公開請求を行って該当する領収書を確認されていました。

領収書には「電話料金・SMS送信費ほか」と但し書きがありました。最近、選挙でオートコールと呼ばれる手法が使われることはよくあり、その代金を支払ったということであれば「電話代」として費用とすることは可能だと思います。「SMS送信費」も電話代に含まれる余地もあります。しかし、そうであれば「電話料金・SMS送信費」で良いはずです。「ほか」という記載は非常に不明瞭であり、そこに疑問を覚えました。

また、選挙コンサルティング会社J社では電話業務を行っていないので、どこか別の会社に委託したと考えるのが普通です。だとすれば、大石陣営からその別の会社に支払えば良いので、J社が間に入る必要はないはずですよね。

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