中須賀克行「一戦一戦勝つことだけを考えていた」/全日本ロードJSB1000 チャンピオン特集

 国内最高峰のJSB1000クラスで2年連続全レースで優勝を飾り、連勝記録を23まで伸ばし、11回目のシリーズチャンピオンを獲得した中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)。全日本ロードレース選手権の最高峰クラスで、この記録を破る者は、恐らく現れないだろう。勝ち続ける中須賀のモチベーションは、どこにあるのだろうか。

「とにかく一戦一戦勝つことだけにこだわっていました。チームスタッフも常に緊張感をもって、しっかり整備してくれて送り出してくれました。記録を作ることを目指したわけではなく、一戦一戦、力を出し切ることを目標置き、その結果が11回目のチャンピオンにつながったという感じですね。ヤマハ発動機も“感動創造企業”と銘打っていますし、毎戦勝利に向かって戦うことで、ファンの皆さんに感動を提供できればと走っていました」

トップ争いを繰り広げる中須賀克行と渡辺一樹/2022全日本ロード第2戦鈴鹿2&4 JSB1000 レース2

 2022年シーズンでファンから見ても、印象に残っているレースと言えば、第2戦鈴鹿2&4のレース2と最終戦MFJグランプリのレース3だろう。いずれも渡辺一樹と一騎打ちの死闘を繰り広げたレースだ。

「確かにどちらも印象的なレースですね。最終戦のレース3は、連勝記録を意識し過ぎて、相手のペースに付き合ってしまい苦しい展開になってしまいましたね。鈴鹿2&4の雨のレースは、今だから言えますけれど途中“チャンピオンシップを考えたら2位でもいいか”という甘い考えが出た瞬間があったんです。セーフティカーが入って気持ちを切り換えることができて、勝ち切ることができたのは大きかったですね」

2022全日本ロード:中須賀克行、岡本裕生(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)

 また、2022年は、チームメイトとして岡本裕生が加わった。岡本は、JSB1000クラス1年目ながら、高い順応性を見せ表彰台の常連になるかと思われたが、後半戦は怪我に泣かされた。そのなかで中須賀に迫る速さも見せていた。

「岡本選手は、著しい成長を見せましたね。SUGOのレース2では、全力で逃げていたのに、すごい勢いで追い付いて来ていたので苦しかったですね。“まだまだ負けられねー!”と思いながら何とか勝つことができましたが、これからも切磋琢磨してお互いのレベルを上げていくことができる、いい関係を築いていきたいですね」

 2022年の8月で41歳になった中須賀。ヤマハMotoGPマシンのテストライダーも務めていることもあり、フィジカル面でも世界最高レベルの状態を常に保っていなければならない。年齢を重ね、その辺りでの変化はあったのだろうか。

「筋肉はつけすぎると動きにくくなるので筋トレよりも持久系のトレーニングが増えましたね。ランニングは、以前は30分だったものが、60分、80分と長くなっています。レーシングスピードで走っていると、心拍数が上がるので、どれだけ長くきつい時間帯を耐えられる身体を作るかが、今の課題ですね。若さに勝るものはないですけれど、もっと若いころから、やっておけばよかったということもあるので、その辺りを(後進に)伝えていきたいですね」

中須賀克行(ヤマハ・テスト・チーム)/2022MotoGPセパンシェイクダウンテスト2日目

 2022年シーズンのMotoGPは、ヤマハにとってファビオ・クアルタラロがタイトル防衛を逃し、サテライトチームがなくなることが決まるなど、チャンピオンを獲得した2021年に比べると寂しいシーズンとなった。

「2022年は、海外でテストすることが多くなりカル(・クラッチロー)が頑張ってくれているので、国内でのMotoGPテストは、少なくなってきています。そのなかで国内でしかできないこともあるので、いいものを作っていかないといけないですし、JSB1000も頑張って速く走れるようにしないといけないですから」

 2022年に3年振りに開催された鈴鹿8耐にヤマハファクトリーの姿はなかった。その間、MotoGPのテストは、もちろん、JSB1000クラスを戦うヤマハYZF-R1のテストも行っていた。

「鈴鹿8耐のインターバルでは、R1も8年目になるので、ディメンションを変更するなど、レースウイークや事前テストではできない大きなセット変更をして、新しいセッティングを試していました。そのなかで、いい部分、よくない部分もありましたが、後半戦は、新しいセッティングを進めていきました」

最終戦で通算3000ポイントを獲得した中須賀克行、ヤマハの日髙祥博社長/2022全日本ロード

 JSB1000クラスを走っている多くのライダーが鈴鹿8耐に参戦するなか、自身も走りたいとは思わなかったのだろうか。

「“荒れているな~”と思いながら、しっかり見ていましたよ(笑)。鈴鹿8耐は、レーシングライダーなら一度は走ってみたいレースです。僕は、酸いも甘いも、本当に多くの経験をさせてもらいました。特にファクトリー体制で出場した5年間は、夢のような時間でした」

 鈴鹿8耐に関しては、やり尽くした感が強いようだ。またヤマハがファクトリー体制で出るときは、夢の続きを見られるかもしれない。

 正式発表は、まだだが、来シーズンも中須賀は、JSB1000クラスを戦うことになりそうだ。絶対王者と呼ばれ、連勝記録を更新中だが、来シーズンの開幕戦に勝つと、最高峰クラスの最年長記録も更新することになる。今のところ、この可能性は限りなく高いと言えるだろう。中須賀の連勝は、どこまで伸びるのか!? ストップをかける選手は現れるのだろうか!?

2022全日本ロードJSB1000:YAMAHA FACTORY RACING TEAM

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