希少疾病の米良美一が医療従事者に感謝、第8波にも「生きる」活力を 小島奈津子アナは父の難病告白

この年末、新型コロナウイルス感染症「第8波」の拡大に伴い、感染者と死者数が増加している。そこで気になるのは疾患を抱える人たちのこと。感染すれば生命に関わる事態となる。そういった状況も背景にして、幅広い視野で「希少疾患と社会、私たちが気づきあうためのヒント」を考えるイベントがこのほど、都内で開催された。自身も希少疾患を抱えながら歌手として活躍する米良美一や医療分野の専門家らが参加した。

イベントのテーマとなった「希少疾患」について、厚生労働省難病対策委員会委員長、関西電力病院特任院長である京都大学名誉教授の千葉勉氏が次のように説明した。

「指定難病として338疾患が指定されており、患者数が人口の0・1%以下とされています。難病の大半が希少疾患で、そうなると約1万種あるんですね。希少疾患の治療薬は日本の中で5万人未満の病気が対象になっている。現在治療可能な疾患は5%のみです。疾患の認知度が低いために専門医が少なく、診断がつくのに平均5年もかかり、生涯にわたる長期療養が必要になる。いかにきちんとした診断を受けられるか、より適切な専門医に診てもらえるかが問題。治療法が確立していないので、その道筋を作っていくことも大事。患者さんは生活が制限されるので、就労や通学の支援も大きな問題になる、患者さんを孤立させないことが大きな課題です」

〝希少〟とはいえ、約20人に1人ということで、全世界では約4億人もの患者がいるという。

千葉氏と対談した元フジテレビのフリーアナウンサー・小島奈津子は「私の父が『骨髄異形成症候群(MDS)』という血液の希少がんだと思うのですが、その診断をされて闘病し、私も支えてきたわけですけど、これも希少疾患ですか」と尋ねると、千葉氏は「そうです。希少疾患ですし、難病の定義に当てはまります」と回答。小島は「病気の情報が少ないと患者も家族もどうしたらいいか分からず、心の孤立がある。孤立しないような情報を得られるルートがあれば状況が変わってくるのではと、父を看病していた時期に思いました」と実体験を踏まえて提言した。

さらに、小島は「ファミリーハウスというNPO法人の団体がありまして、地方の小児がんのお子さんが東京の大きな病院で診療を受けるために親御さんと出て来られても、アパートを借りたりするとお金がかかるので、(宿泊できる)一棟を建てて負担を減らそうという団体で、私も支援しています。小さいお子さんががんを克服して元気になられた話を絵本にして、朗読をしたり、募金、チャリティーに参加している。小さいことでも手助けできるということが分かっていただけたら」と付け加えた。

幼少時から全身の骨が骨折を繰り返す希少疾患「先天性骨形成不全症」を患っている米良は「困った時に手を差し伸べていただける、そういうことをお願いできる社会になったらありがたいと思いますし、自分も誰かのために、ささいなことでも気づいて差し上げることができるような、共感力を養っていきたい。世の中みんながそれぞれの悩みや不安を抱えながら生きている。それをオープンにできる世の中になっていくことが大事。社会的弱者といわれる立場の人が弱いわけじゃない、みんな同じです」と呼びかけた。

千葉氏は「米良さんのように得意なことを伸ばし、社会で活躍していらっしゃる方がいることは、患者さんへの力強いメッセージになる」とエールを送った。

一方で、コロナ禍という、病を持つ人にとって厳しい状況が続く。この年末、日本の状況は深刻だ。

世界保健機関の集計で12月12-18日の週間感染者数が日本は104万6650人となり、7週連続で世界最多に。27日には国内で過去最多となる438人の死者が報告された。1日の死者数が400人を超えたのは初めてで、29日まで連続して400人を超えている。死者数は11月中こそ2桁や100人台が多かったが、12月は200-300人台の日が目立つようになっている。

病を抱えている人にとってコロナ感染は命取りになりかねない。米良は「コロナの時代で多くの医療従事者の皆さんが私たちの想像を絶するような思いで患者さんに当たっておられます。本当に頭が下がる思いです。私も小さい時からお医者さんや看護師さん、理学療法士といった先生方に支えられてきた。厳しい状況を戦っておられる医療従事者の皆さんに敬意と愛を込めて、改めて生かされていることに感謝したい」と実感を込めた。

アニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の主題歌でブレークした米良。「病気を抱える人間としては甘えになってはいけないし、自分でできることは極力頑張って生きていきたいと、年を重ねることでますます思うようになりました。それが『生きる』ということの活力になる」と思いを吐露する。同作公開時(1997年)のキャッチコピーは「生きろ」。四半世紀を経た今も、そのメッセージを体現している。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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