井原の伝説や昔話を冊子に 住民団体が取材編集、市教委発刊

市内の住民グループが編集した民話集「昔むかし」

 井原市教委は、市内に伝わる伝説や昔話をまとめた冊子「井原市の民話 昔むかし」を発刊した。新型コロナウイルス禍で祭りや伝統行事が途絶える中、子どもたちに感受性を育んでもらう狙い。ヒアリングと編集は市内で語り活動を展開している住民グループが担当した。

 旧井原市域、芳井、美星町の各語りの会メンバーが2018年11月、編集委員会を設立。自治会長らの協力を得て伝承を知る市民を探し、対面による取材で録音し文字に起こした。4年がかりで300話以上を収集し、途中、20年に作製した冊子に掲載した一部を除く計205話を収録した。

 A5判、343ページ。身近な人から聞いた「昔話」、史実に基づく「伝説」、実話として語られた「世間話」の3章構成。接待した物乞いの恩返しにより疫病を逃れ、子孫が繁栄する「蘇民将来物語」(昔話)、木之子町の水田の中の岩にまつわる「船岩」(伝説)、川のコイに化けたキツネが盗みを働く「狐話~鯉(こい)に化ける」(世間話)などがある。

 漢字には小まめに読み仮名を振り、雰囲気が出るように語り部の方言を尊重している。伝説の話に関係する場所が分かる地図も載せた。

 編集委員代表の鈴木泉さん=同市=は「民話を通じて子どもたちに想像力を豊かにしてもらいたい。次の世代への継承にも役立てばうれしい」と話している。

 岡山民俗学会名誉理事長の立石憲利氏が監修し、市教委が600冊作製。市内の図書館で貸し出すほか、幼稚園、小中高校、公民館にも置いている。市文化財センター(井原町)などで販売している。1500円。問い合わせは市教委文化スポーツ課(0866―62―9541)。

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