「ウィズコロナ」歩み進める年に イベント次々 岡山に再始動の風

人波が戻りつつある歳末の岡山市中心部。2023年は感染防止対策とともに社会経済活動が再開する本格的な「ウィズコロナ」の幕開けとなる

 見えない敵との闘いに光が差してきた。国内初の新型コロナウイルス感染が確認されて約3年。スポーツ、伝統祭事、文化イベントと自粛を余儀なくされてきた社会経済活動の数々が、感染防止対策と両立させながら再開の時を迎えた。復活のキーワードは「ウィズコロナ」。ウイルスと共存する新たな日常へ、歩みを進める年が明けた。

 年の瀬の岡山市中心部。JR岡山駅ではスーツケースを持った家族連れらが行き交い、百貨店前の商店街も買い物客らでにぎわいを見せていた。

 岡山市によると、市中心部の人出は10、11月の休日で計約266万人。前年同期比で約20万人、8%増加した。政府は新型コロナの法的位置付けについて季節性インフルエンザと同等の「5類」相当への引き下げを検討しており、「自粛と制限」からの転換がさらに進みそうだ。

新様式採用

 早春の吉備路を4年ぶりにランナーたちが駆け抜ける。2019年を最後に中止となっていた「そうじゃ吉備路マラソン」が2月26日、総社市を発着点に開かれる。従来の7種目からフル、ハーフ、10キロの3種目に絞った上で、時間差で出発して密状態を避ける「ウエーブスタート」を初めて採用する。

 岡山市では年明け早々の1月4、5日、高校空手三大大会の一つ「桃太郎杯全国錬成大会」、同29日には市町村チームが競う「晴れの国岡山駅伝」もそれぞれ3年ぶりに催される。

 新様式でのイベント再開が増えたのは昨年からだろう。印象づけたのは11月の「おかやまマラソン2022」だ。1万人を超える参加者にワクチン接種や陰性証明を求め、3年ぶりの開催にこぎ着けた。高岡敦史岡山大准教授(スポーツ経営学)は「感染防止と折り合いを付け、コロナ禍でのスポーツ大会の在り方を示した」と評価する。

 伝統の灯も明るさを少しずつ取り戻そうとしている。西大寺観音院(岡山市)で2月18日に開かれる「西大寺会陽」(国重要無形民俗文化財)は3年ぶりに境内に観客を入れ、裸衆が練り歩く「地押し」を行う。裸衆による宝木(しんぎ)争奪戦こそ見送るものの、坪井綾広住職は「手探りが続く中で大きな前進」と完全復活へ思いを巡らせる。

 倉敷市の美観地区などで繰り広げる倉敷音楽祭は3月、「まちなかに春の音色が帰ってくる」をキャッチフレーズに19年以来の開催となる。県教委は「高校生短期留学プログラム」を4年ぶりに計画し、3、4月に生徒たちがオーストラリアとカナダで実習に臨む。

制約最小限

 「23年もコロナが消えることはないだろう。それでも、いろいろと工夫しながら最小限の制約で社会が回っていくことを願う」。12月21日、岡山県の伊原木隆太知事は22年最後の記者会見でこう語った。

 県は岡山桃太郎空港(岡山市)で全線運休が続く国際定期路線を早期に再開させたい考えで、インバウンド(訪日客)を引き寄せるイベントも活発化する。

 岡山に吹く再始動の風が地域に活気を取り戻させるか。ウィズコロナ時代を切り開く一歩は少しずつでも、確かなものでありたい。

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