献血続けて半世紀以上、420回 「人のこと思いやって」大村の農業・川口さん

「人のことを思いやり、多くの人が献血に通うようになれば」と話す川口さん。左腕から採血することが多かったという=大村市弥勒寺町

 「毎回『これでまた1人助かったかな』と思って続けてきた」-。長崎県大村市弥勒寺町の農業、川口雅克さん(70)は、18歳のころから献血に通い続けて半世紀以上。69歳までの年齢制限により昨年、最後の献血を終えた。献血回数は420回に上り「生活の一部となっていたが、今は達成感の方が大きい」と満足げに話す。

 川口さんが献血に行くきっかけとなったのは18歳のころ。近所の人が入院した際、「治療のための血液が足りない」と提供を依頼されたことだった。「初めは緊張もあってか、採血後にしばらくベッドで寝込んでしまった」と笑う。
 その後も、母がマムシにかまれて病院に見舞いに行った時も「母が世話になっているから」と献血。結婚して子どもに恵まれてからも、デートや家族サービスに合わせて献血ルームに立ち寄ったり、仕事仲間を誘って献血会場に行ったりしていた。
 献血の習慣は健康維持にも役立った。30歳のころ、成分献血で自分の血が「澄み切っていてきれいですね」と、褒められたことがうれしかったという。それから食生活に気を配り、肉など脂っこいものは食べず野菜や魚が中心となった。
 70歳の今でも農作業を元気に続けており、肥料にこだわり栽培したイチジクは「これ以外もう食べられない」と評判という。クラシック音楽鑑賞やサボテン栽培の趣味も楽しんでいる。「これまで持病はなく、同級生と比べても健康。料理などに気を使ってくれた妻の協力があったからこそ」と感謝する。
 若い世代の献血離れが叫ばれ、新型コロナ禍がさらに拍車をかけている現在。「献血は思い立った時に自分1人でできるボランティア。自分がけがや病気をした時のことを思えばお互いさま。人のことを思いやり、多くの人が献血に通うようになれば」と話した。
◇ ◇ ◇ 
 県赤十字血液センターによると、新型コロナの流行「第8波」の影響などで、昨年12月の献血者は著しく減少した。同月1~27日の期間で、3033人の必要人数に対する献血者数は2783人で、250人分が不足している。
 同センターは12月28日から1月10日までに、400ミリリットル献血で1276人分を必要としており、年始は3日から献血ルームや献血バスで通常通り受け付ける。
 同センターの担当者は「献血の現状は一層厳しくなっている。血液にも有効期間があるため、県民には継続してご協力をお願いしたい」と呼びかけている。


© 株式会社長崎新聞社