異次元の少子化対策

 聞いた瞬間「新語・流行語」の有力候補-と直感し、発言が正月の4日ではさすがに気が早い…と思い直したが、もしも年末までこの言葉が記憶に残り続けているようなら少しは状況も変わっていくかな、と期待を込めて考えることにした。岸田文雄首相が打ち出した「異次元の少子化対策」▲昨年生まれた赤ちゃんの数は初めて80万人を割ることが確実で、この国の少子化は想定より8年も早いペースで進んでいる、との記事が昨年末にあった。首相の言葉通り「先送りできない問題」には違いなさそうだが▲「異次元」は「通常とは全く異なる考え方」を指すのだろう。ただ、会見で示された経済的支援の強化や、子育て家庭を対象としたサービスの拡充が“異次元”とまで言えるかどうか▲少子化の背景には晩婚化や非婚化の広がりも指摘される。「子育て支援の充実」だけでは効果は限定的だろう。かと言って、晩婚も非婚もデリケートな自己決定の結果だから、国が何かの政策で状況を動かそうと試みることには素朴な抵抗も感じる▲「異次元」と呼ぶのにふさわしい政策が形になる時は、その抵抗感を拭い去る説得力や説明力も併せて試される▲“異次元”は「対策」にかかっているのか、単に「少子化」を修飾しているのか-今更のように気になった。(智)


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