マクラーレンのザク・ブラウン、F1の新規則を前向きに評価も「効果が出るまで時間がかかる」と主張

 マクラーレン・レーシングのCEOを務めるザク・ブラウンは、2022年に導入されたF1の新しい技術規則について、規則変更の効果が出るまでには時間がかかると主張した。

 グラウンドエフェクトエアロダイナミクスの復活を含む、F1の技術ルールとレギュレーションの最新の変更は2022年シーズン初めに導入されたもので、ブラウンは、こうした変更は「効果を出すために時間が必要とされる」と考えている。コース上のレースをさらにエキサイティングにし、競争の場を公平にすることを目的とした変更だったが、2022年シーズンは3チームによって支配された。

 22戦のうちには66の表彰台ポジションがあるが、レッドブル、フェラーリ、メルセデス以外のドライバーによって占められたのはひとつだけだった。表彰台を獲得したのはランド・ノリス(マクラーレン)で、4月にイモラで開催されたエミリア・ロマーニャGPでのことだった。

2022年F1第4戦エミリア・ロマーニャGP ランド・ノリス(マクラーレン)が3位表彰台を獲得

「レースは素晴らしかった」とブラウンは『Racingnews365』の独占インタビューで主張した。

「シーズンは完全に支配されていたが、それでも退屈なシーズンだとは感じなかった」

「データ上の結果よりもレースははるかにエキサイティングに見えたし、そう感じることができた」とブラウンは主張し、2000年代初頭にミハエル・シューマッハーとフェラーリが全面的に主導権を握っていた時代と比較した。

「シューマッハーが覇権を握っていた頃のレースは最初からあくびがでるようだったが、それでもすべてがエキサイティングだった」

 ブラウンは、ルール変更がある場合、ひとつやふたつのチームが早い段階でアドバンテージを得るのは一般的なことだが、チーム間の差はその後の数シーズンですぐに縮まるものだと指摘した。

「レギュレーションの効果が出るまで時間がかかると思う」とブラウンは認めた。彼の意見では、レギュレーションは優れており、今後その価値が証明されるだろうという。

■2023年にはシミュレーターと風洞が整うマクラーレン

 全体的にマクラーレンにとっては浮き沈みのあるシーズンだった。マクラーレンは2020年にコンストラクターズ選手権で3位につけた。しかし2021年は4位に落ち、2022年は4位の座を14ポイント差でアルピーヌに奪われた。

「2021年は、マシンの大部分を2020年から引き継ぐというルールから恩恵を受けたと思う」とブラウンは推測した。「競争の場は自然と差が縮まった。2021年に表彰台を獲得したのは我々だけではなかったからだ」

 2022年、マクラーレンはコンストラクターズ選手権のタイトルを獲得したレッドブルに600ポイントという大差をつけられた。プラスの面としては、シーズンの大半でポーパシングの問題に苦しんでいたエンジンプロバイダーのメルセデスにさらに近づくことができた。だが、物議を醸したパワーユニットをめぐってFIAが介入したことで散々な2020年シーズンを送ったフェラーリが立ち直ったことで、マクラーレンのような中団チームはより厳しい状況に陥った。

「フェラーリは、今年(2022年)彼らが作ったようなレーシングマシンを生産するためのツールをすべて揃えている。彼らには風洞などの設備がすべて整っている」とブラウンは語った。

「(エンジン問題によって後退したところから)彼らがどれだけ早く復活したかということに目を向けてみれば、彼らはそもそもあのポジションにいて当然だ。彼らにはドライバーがいるし、予算も技術インフラもある」

「フェラーリがあのようにすぐに立ち直ったことには驚いていない。我々が彼らと同様に早く復活できるとは考えなかっただろう。我々のインフラはまだ一部不足しているものがあるからだ」

「我々には予算があり、素晴らしいドライバーラインアップを擁していたが、ダニエル(・リカルド)との間には明らかに課題があった。ランドはマシンの性能を引き出しているが、まだ技術インフラが揃っていない。だがシミュレーターと風洞が2023年に整うことになっている」

 ブラウンは、2023年のチームの目標はトップ3に入ることだと語った。チーム代表のアンドレアス・ザイドルがザウバーに移籍しても、その目標は変わらなかった。

「レースチーム運営は非常に順調だ。我々に欠けていることは分かっている。マシンのペースがトップレベルにないことは、技術インフラが原因だが、幸いなことに間もなくインフラは整備される」

2022年F1シンガポールGP ランド・ノリス(マクラーレン)&ザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)

 またブラウンは今シーズンのドライバーラインアップについて、ノリスと、リカルドと交代して新チームメイトになるルーキーのオスカー・ピアストリの間には、何の問題もないと考えている。

「オスカーは世界最速のドライバーのひとりをチームメイトに持つことになるが、オスカーは挑戦する準備ができていると私は予想している。私は期待は持っていないし、彼がこの日までにこれをやるべきだ、などということも設定していない」

「だがランドはF1の誰よりも速いと思う。レースに勝てる装備があれば、彼はレース優勝を飾るだろう。それについては誰もが賛成するだろうと思う」

 ザイドルもチームを去る前に、このペアの間には何の問題もないだろうと予測していた。

「もちろんドライバーはそれぞれ違う。気質も性格も違っている」とザイドルは語った。

「だが必ずしもあるタイプの関係性が他の関係性よりいいとか悪いとかいうことにはならない」

「結局のところ、男として、キャラクターとして、人として、ドライバーとしてのランドのあり方と、これまでのところ我々が見てきたオスカーのあり方を見ると、何の問題もないと思う」

2022年F1アブダビテスト オスカー・ピアストリ(マクラーレン)

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