WECの2023年暫定エントリーリストが公開。LMDhの参加によりハイパーカーは計13台に

 1月11日、WEC世界耐久選手権は同日付けで2023年シーズンの暫定年間エントリーリストを公開した。100周年を迎えるル・マン24時間レースを含めて全7戦が行われる“シーズン11”には、3つのクラスから都合38台が出場予定だ。

 2012年の現行シリーズ発足以来、WECはふたつのプロトタイプカテゴリーと、同じくふたつのGTカテゴリーの計4クラスが存在していた。しかし2022年限りでLMGTEプロクラスが消滅したことにより新シーズンは、ハイパーカー、LMP2、LMGTEアマの3クラスでバトルが繰り広げられることになる。

■“耐久の雄”ポルシェが一挙4台来襲

 この中でもっとも大きな変化があるのは計13台がエントリーする、最高峰カテゴリーのハイパーカークラスだ。2021年のル・マン・ハイパーカー(LMH)規定の導入にあわせて創設された同クラスでは、TOYOTA GAZOO Racingがチャンピオンシップとル・マンの両方で連覇を飾っているが、ここに強力なライバルが登場する。

 なかでも注目はフェラーリ・AFコルセだ。LMH規定の新型マシン『499P』を投入し、半世紀ぶりのプロトタイプカーレース復帰をアナウンスしたイタリアの名門ブランドは、10日(火)にはアントニオ・ジョビナッツィら計6名のドライバーラインアップが発表された

 また、2023年のWECハイパーカークラスは、今季から北米スポーツカーシリーズのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で採用されるLMDhプラットフォームを基に製作された車両が参戦可能となり、初年度から『ポルシェ963』と『キャデラックV-LMDh』が投入される。

『963』を走らせるのはワークスチームのポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)とカスタマーチームのハーツ・チーム・JOTA、プロトン・コンペティションの計3チームで、すでにフレデリック・マコウィッキやアンドレ・ロッテラーらを擁すドライバーラインアップを発表しているPPMのみ2台体制を敷く。

 もう一台の“黒船”を走らせるキャデラック・レーシングも名門のチップ・ガナッシ・レーシングが運営するワークスチームであり、ポルシェやフェラーリ、デビューイヤーとなった2022年からの体制維持を明らかにしているプジョー・トタルエナジーズとともに『打倒トヨタ』に燃える。対するTGRは既報のとおり、シリーズ王者となった平川亮組の8号車、小林可夢偉兼任代表が乗り込む7号車組ともにドライバーラインアップに変更はない。

■元F1王者ジャック・ビルヌーブがヴァンウォールから参戦へ

 ノンハイブリッドLMH規定車である『007 LMH』を走らせるグリッケンハウス・レーシングは、昨季と同様にシングルカー体制での参戦に。ドライバーは現時点でロマン・デュマのみ登録されている。

 シリーズへの復帰を目指していたバイコレスあらため、フロイド・ヴァンウォール・レーシングチームは『ヴァンウォール・バンダーベル680』での参加が認められた。トム・ディルマン、エステバン・グエリエリとともにノンハイブリッド・ハイパーカーのステアリングを握るのは、元F1ワールドチャンピオンのジャック・ビルヌーブだ。

 一方、ル・マンに照準をあわせ“前哨戦”である第2戦スパからの参戦を目指すとしていたイタリアのクラシックカーメーカー、イソッタ・フラスキーニの参戦は認められなかった。

元F1ワールドチャンピオンでインディ500王者でもあるジャック・ビルヌーブ
フェラーリ499Pのドライバーとして発表された6名

■LMGTEアマクラスに3名の日本人ドライバーが参戦

 LMP2クラスは7チームから計11台が参戦する。2022年までノンハイブリッドLMP1マシンでハイパーカークラスを戦っていたアルピーヌ・エルフ・チームは、このクラスで2台体制を敷き『オレカ07』のリバッジカーである『アルピーヌA470』の35号車と36号車を走らせる。

 同じく2台体制を敷くのは、ユナイテッド・オートスポーツとプレマ・レーシング、そして『BMW MハイブリッドV8』での2024年のハイパーカークラス参戦を予定しているチームWRTだ。

 シングルカーでシリーズに挑むのはインターユーロポル・コンペティション、最高峰クラスでポルシェ963を走らせるJOTA、イソッタ・フラスキーニとの提携を発表しているベクター・スポーツの3チームだ。アルピーヌ以外のチームの参戦車両はすべてオレカ07・ギブソンとなっている。

 LMGTEアマクラスは2022年シーズンからさらに1台増え、計14台での戦いが繰り広げられる。登場するブランドはポルシェ、フェラーリ、アストンマーティンにシボレーを加えた4つ。内訳はポルシェ911 RSR-19が最多の6台、次いでフェラーリ488 GTEエボが4台、アストンマーティン・バンテージAMRが3台、シボレー・コルベットC8.Rは1台となっている。

 唯一のシボレーはプロクラスから移ってきたコルベット・レーシングによって運営され、ベン・キーティングとニッキー・キャツバーグ、現時点では未発表のドライバーがドライブする。

 そのキーティングとともに2022年に大成功を収めたTFスポーツは、ORT・バイ・TFと名称を改めオマーンチームとして2023年のスタートを切る。使用マシンはバンテージGTEが継続される予定だ。

 リシャール・ミル・レーシングはLMP2クラスで2年間過ごした後、2023年はAFコルセとのタッグでフェラーリ488を走らせることとなった。同じフェラーリ陣営ではケッセル・レーシングがエントリーしており、木村武史がスコット・ハファカーとル・マンウイナーのダニエル・セラとともに名を連ねた。

 この他、AFコルセやノースウエストAMR、今季からポルシェ911 RSR-19を使用するアイアン・リンクスにGRレーシング、デンプシー・プロトン、プロジェクト1などお馴染みのチームが並び、38台の最後には先日、2023年の参戦体制を発表したDステーション・レーシングの星野敏/キャスパー・スティーブンソン/藤井誠暢組が名を連ねている。

アイアン・リンクス(60号車)と“女性チーム”アイアン・デイムス(85号車)のポルシェ911 RSR-19
2023年もWEC世界耐久選手権に参戦することになったDステーション・レーシング

■2023年WEC世界耐久選手権 暫定エントリーリスト(1月11日付)

Pos. No. Class Team Car Driver Tyre

1 2 HYPERCAR キャデラック・レーシング キャデラックV-LMDh E.バンバー
A.リン
R.ウエストブルック MI

2 4 HYPERCAR フロイド・ヴァンウォール・レーシングチーム ヴァンウォール・
バンダーベル680 T.ディルマン
E.グエリエリ
J.ヴィルヌーブ MI

3 5 HYPERCAR ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ ポルシェ963 D.キャメロン
M.クリステンセン
F.マコウィッキ MI

4 6 HYPERCAR ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ ポルシェ963 K.エストーレ
A.ロッテラー
L.ファントール MI

5 7 HYPERCAR トヨタ・ガズー・レーシング トヨタGR010ハイブリッド M.コンウェイ
小林可夢偉
J-M.ロペス MI

6 8 HYPERCAR トヨタ・ガズー・レーシング トヨタGR010ハイブリッド S.ブエミ
B.ハートレー
平川亮 MI

7 38 HYPERCAR ハーツ・チーム・JOTA ポルシェ963 Y.イェ
TBA
TBA MI

8 50 HYPERCAR フェラーリ・AFコルセ フェラーリ499P A.ピエール・グイディ
J.カラド
A.ジョビナッツィ MI

9 51 HYPERCAR フェラーリ・AFコルセ フェラーリ499P A.フォコ
M.モリーナ
N.ニールセン MI

10 93 HYPERCAR プジョー・トタルエナジーズ プジョー9X8 P.ディ・レスタ
M.イェンセン
J-E.ベルニュ MI

11 94 HYPERCAR プジョー・トタルエナジーズ プジョー9X8 L.デュバル
G.メネゼス
N.ミューラー MI

12 99 HYPERCAR プロトン・コンペティション ポルシェ963 G.ブルーニ
TBA
TBA MI

13 708 HYPERCAR グリッケンハウス・レーシング グリッケンハウス007 LMH O.プラ
R.デュマ
P.デラーニ MI

14 9 LMP2 プレマ・レーシング オレカ07・ギブソン J.M.コラール
TBA
TBA GY

15 10 LMP2 ベクター・スポーツ オレカ07・ギブソン R.カレン
TBA
TBA GY

16 22 LMP2 ユナイテッド・オートスポーツ オレカ07・ギブソン F.アルバカーキ
P.ハンソン
TBA GY

17 23 LMP2 ユナイテッド・オートスポーツ オレカ07・ギブソン J.ピアソン
T.ブロンクビスト
O.ジャービス GY

18 28 LMP2 JOTA オレカ07・ギブソン D.ハイネマイヤー・ハンソン
P.フィッティパルディ
O.ラスムッセン GY

19 31 LMP2 チームWRT オレカ07・ギブソン S.ゲラエル
TBA
TBA GY

20 34 LMP2 インターユーロポル・コンペティション オレカ07・ギブソン J.スミエコウスキー
F.シェーラー
TBA GY

21 35 LMP2 アルピーヌ・エルフ・チーム アルピーヌA470・ギブソン M.バキシビエール
TBA
TBA GY

22 36 LMP2 アルピーヌ・エルフ・チーム アルピーヌA470・ギブソン A.ネグラオ
TBA
TBA GY

23 41 LMP2 チームWRT オレカ07・ギブソン R.アンドラーデ
TBA
TBA GY

24 63 LMP2 プレマ・レーシング オレカ07・ギブソン D.ピン
TBA
TBA GY

25 21 LMGTE Am AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ S.コスタンティーニ
S.マン
U.デ・ポー MI

26 25 LMGTE Am ORT・バイ・TF アストンマーティン・
バンテージAMR A.アル・ハーシー
M.ディナン
C.イーストウッド MI

27 33 LMGTE Am コルベット・レーシング シボレー・コルベットC8.R B.キーティング
TBA
N.キャツバーグ MI

28 54 LMGTE Am AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ T.フロー
F.カステラッチ
TBA MI

29 56 LMGTE Am プロジェクト1・AO ポルシェ911 RSR-19 PJ.ハイエット
G.ジャネット
TBA MI

30 57 LMGTE Am ケッセル・レーシング フェラーリ488 GTEエボ 木村武史
S.ハファカー
D.セラ MI

31 60 LMGTE Am アイアン・リンクス ポルシェ911 RSR-19 C.スキアボーニ
TBA
TBA MI

32 77 LMGTE Am デンプシー・プロトン・レーシング ポルシェ911 RSR-19 C.リード
TBA
TBA MI

33 83 LMGTE Am リシャール・ミル・AFコルセ フェラーリ488 GTEエボ L.P.コンパンク
TBA
TBA MI

34 85 LMGTE Am アイアン・デイムス ポルシェ911 RSR-19 S.ボビー
M.ガッティン
R.フレイ MI

35 86 LMGTE Am GRレーシング ポルシェ911 RSR-19 M.ウェインライト
TBA
TBA MI

36 88 LMGTE Am プロトン・コンペティション ポルシェ911 RSR-19 H.ティンクネル
TBA
TBA MI

37 98 LMGTE Am ノースウエストAMR アストンマーティン・
バンテージAMR P.ダラ・ラナ
TBA
TBA MI

38 777 LMGTE Am Dステーション・レーシング アストンマーティン・
バンテージAMR 星野敏
C.スティーブンス
藤井誠暢 MI

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