平和特派員・竹田さんらイベント 公共空間のモニュメント「問いかけ、想像力が重要」

原爆の記憶を伝える公共空間のモニュメントに焦点を当て、意見を交わす竹田さん(右)ら=長崎市出島町、県美術館ホール

 長崎市の長崎平和特派員で、原爆の記憶をテーマに創作活動に取り組むアーティストの竹田信平さん(44)らが8日、市内でトークイベントを開いた。公共空間のモニュメントに焦点を当て「重要なのは形ではなく、その先に想起される記憶や物語」として、問いかけることや想像力を働かせる重要性を呼びかけた。
 竹田さんはドイツやメキシコを拠点に活動。2004年に広島、長崎を訪れ、被爆者の壮絶な体験に衝撃を受けた。翌05年から被爆者の証言を集め始め、声紋(声の振れ)を視覚化した作品を制作。被爆75年の20年には長崎市の爆心地公園でアートプロジェクト「声紋源場」を開催した。
 プロジェクトに携わった研究者ら4人で「アンチモニュメント・リサーチ・コレクティブ」というグループをつくり、国内外の作家らと対話。今月まとめた論考集では、1990年代にあった市の原爆落下中心地碑撤去問題に批判的な視点で作品を制作した現代美術作家などを紹介している。
 出版を記念して開いたイベントでは、メンバーが登壇。ドイツ在住のアートプロデューサー、三上真理子さんは「(政治的な判断で意味合いが変わるなど)モニュメント化されたものを批判的に、多角的にとらえ直すことで今までと違う見方ができる」と強調した。
 竹田さんは取材に「原爆と普段関わりのない人が絵や映画などさまざまな媒体を通じ関わることが大事。被爆80年となる25年には市内でより大きな規模の催しを開きたい」と話した。
 論考集は長崎平和推進協会の助成事業「秋月グラント」を受け200部発行。希望する人には送料負担で配布する。申し込みはメール(アドレスantimonument.research@gmail.com)で。

© 株式会社長崎新聞社