株価暴落時に覚えておきたい戦略、投資資金にあった方法を金融アナリストが解説

「日経平均株価」に代表されるように、相場全体の動きをあらわす「指数」は、投資家にとって重要な判断材料です。それぞれの指数がどのようなものかを知ることは、戦略を考える上で役立つと考えます。

今回は、ニュースでよく見る「ダウ平均」と、日本のダウ平均ともいえる「TOPIXコア30」について解説するとともに、TOPIXコア30のETFや少額でもできる投資戦略も具体的にご紹介します。


ダウ平均とTOPIXコア30

ダウ平均とは、アメリカのダウ・ジョーンズ社が算出している「ダウ工業株平均30種」という株価指数のことです。アメリカの代表的な30銘柄の株価を元にしている、米国株式市場の代表的な株価指数となっています。構成銘柄はS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社により選出されており、NYダウとも呼ばれています。

米市場の主要3指数はダウ平均のほか、米市場の時価総額の約80%をカバーする米国を代表する500社により構成された「S&P 500」と、ハイテク株で構成される「NASDAQ総合」
があります。日本のニュースでは米主要3指数のなかでダウ平均が報道されることが多く、日経平均株価にも大きく影響する株価指数であるといえます。

日本のニュースで報道される日本市場の指数は日経平均株価ですが、日経平均は日本経済新聞社が算出する東京証券取引所のプライム市場に上場している225銘柄の平均株価指数となっており、米市場におけるS&P 500のような存在です。それでは日本におけるダウ平均はというと、銘柄数や内容から鑑みてTOPIXコア30が相当すると考えられます。

TOPIXコア30は、東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄のなかで時価総額と流動性が特に高い30銘柄で構成されている指数です。算出方法は1998年4月1日の時価総額を1,000ポイントとして、その後の時価総額を指数化しており、市場の実態をより的確に反映するために構成銘柄の定期入替を年1回、毎年10月に行っています。

2023年1月10日時点での指数の組入銘柄。割合順で5銘柄ご紹介するとトヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)、三菱UFJ銀行(8306)、キーエンス(6861)、NTT(9432)となります。

指数を活用した投資戦略

前回の記事ではダウ平均やTOPIXコア30を活用した投資戦略「ダウの犬」をご紹介しました。ダウ平均株価を構成する30銘柄を配当利回りが高い順に並べて、配当利回り上位10銘柄を選び、上位10銘柄に同じくらいの金額を投資します。そして年末に売却してまた次の年に同じことをするという、米著名投資家であるマイケル・B・オヒギンズが著書で紹介した投資戦略です。

ダウの犬は知識がなくても実践しやすい簡単な投資戦略ではありますが、日本版ダウの犬に投資しようとすると優に200万円以上かかってしまうため、もっと低い投資資金からできる方法を知りたい、とリクエストをいただきました。ちなみに米市場のダウの犬や、日本版でもミニ株など1株単位で投資を行えば少額から実践可能な投資戦略だといえます。ただ日本株は100株が1単元なので、どうしても最低投資額が高くなりがちです。

そこでまずはTOPIXコア30に少額から分散投資できる、TOPIXコア30をベンチマークとするETF(上場投資信託)を紹介します。野村アセットマネジメントが管理しているNEXT FUNDS TOPIX Core 30連動型上場投信(1311)は2002年4月3日(水)に上場しており、1月11日(水)時点の価格は936.9円です。売買単位は10口ですので最低買付金額は9,369円となるので、1万円以内で投資できますね。分配金利回りは1.50%で、信託報酬は0.209%です。

続いて投資戦略についてもお伝えします。前回紹介したダウの犬という投資戦略の仲間で、より少額から投資できる「ダウの子犬」という投資戦略があります。まず、2022年末時点での日本版ダウの犬は下記10銘柄でした。

ソフトバンク(9434)
武田薬品工業(4502)
三井住友FG(8316)
本田技研工業(7267)
東京エレクトロン(8035)
三菱商事(8058)
東京海上HD(8766)
KDDI(9433)
みずほFG(8411)
三菱UFJ(8306)
※その日の株価によって銘柄は入れ替わります。

そしてダウの子犬という投資法はこのダウの犬銘柄の中で、株価の低い5銘柄に投資する戦略です。日本版ダウの犬銘柄を1月11日(水)時点の値動きで金額の低い順に見ていくと、下記5銘柄となります。

三菱UFJ(8306):953.6円
ソフトバンク(9434):1,466.0円
みずほFG(8411):2,007.5円
東京海上HD(8766):2,773.5円
本田技研工業(7267):3,121円

5銘柄で10,321.6円、つまり最低投資金額は約103万円となります。

さらに資金を抑える戦略としては「ダウの子犬X」という、ダウの犬の株価が低い3銘柄に投資する戦略もあります。先ほどと同様に1月11日(水)時点の値動きで見ると、下記3銘柄となります。

三菱UFJ(8306)953.6円
ソフトバンク(9434)1466.0円
みずほFG(8411)2007.5円

3銘柄で4427.1円、つまり最低投資金額は約44万円となります。ダウの子犬・ダウの子犬Xはいずれも少額で、ブランド力の強い銘柄に投資できる戦略といえるでしょう。

正直なところTOPIXコア30はメジャーな指数とは言い難いですし、ETFは流動性の面でも日経平均連動型のファンドでもいいのではと思います。ただ、ポートフォリオを組む上で、このような指数があることを知っておいて損はないかと思います。

また、ダウの犬は配当利回りが高い企業に投資できることもメリットの1つです。利回りは売り込まれると高くなりますので、景気減速での株価下落時や、◯◯ショックといった暴落時に「ダウの犬」を思い出していただき、戦略として検討してみるのもありかもしれません。

皆様の投資の参考になれば幸いです。

1月9日週「相場の値動き」おさらい

1月9日(月)は成人の日でお休みでしたね。連休中の米市場からおさらいしていきましょう。

1月6日(金)に発表された2022年12月の米雇用統計の結果は、失業率が予想3.7%のところ結果3.5%、非農業部門雇用者数は予想20.1万人増のところ結果22.3万人増でした。11月は速報値26.3万人増から25.6万人増に下方修正されました。平均賃金は前月比予想0.5%増のところ結果0.3%増、前年比予想4.9%増のところ結果4.6%増と、賃金が予想を下回ったことで、インフレ鈍化 → 米金融引き締め長期化の懸念後退(ソフトランディングできるかも) → 株高につながりました。

また、12月の米ISM非製造業景況感指数も49.6と好不況の境目とされる50を20年5月以来で割り込んできました。前月の56.5から低下したほか市場予想も下回る結果で、これも景況感の経済指標が悪い結果 →景気減速 → 米金融引き締め長期化の懸念後退 → 株高と繋がる結果となったようです。

この流れは1月9日週の米市場でも継続しました。

1月12日(木)に発表された米12月CPIは、前月比0.1%下落、前年同月比6.5%(コア 5.7%)と、総合コアともに市場コンセンサス通りの結果となりました。 前月は7.1%でしたので6か月連続の下落となり、インフレ鈍化を示す結果でした。

1月31日(火)・2月1日(水)のFOMCで0.25%のシングル利上げとなる確率はFedwatchでは96%を超えています。

一方、1月17日(火)・18日(水)に開かれる日銀金融政策決定会合では日銀は昨年12月20日の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(YCC)の運用見直しを決定しましたが、さらなる政策修正への警戒感が意識されているよう。日米の金利差縮小の思惑から、ドル円は円高・ドル安方向に動いています。

CPIが通過し、相場の注目は企業の決算発表に移るでしょう。企業業績の悪化がどの程度となるのか、リセッション懸念の動向を含めて注目です。引き続き、ボラティリティが高いことを想定しておいた方がよさそうです。

週末1月13日(金)の日経平均株価は、前日比330円30銭安の2万6,119円52銭と6営業日ぶり反落。為替の円高進行や、前日まで5営業日続伸だったので週末の利食い売りも相場の重しとなりました。前週末1月6日(金)の日経平均株価は2万5973円85銭でしたので、週間では145円67銭の上昇でした。

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