イチから分かる「うめきた駅」と「なにわ筋線」 大阪駅と関空を乗り換えなしで結ぶ 阪急の連絡線構想は?【コラム】

JR大阪駅とうめきた駅の地上部全景、大阪府大阪市。白線は地下新線の位置を示しています(画像:JR西日本)

2023年3月、関西圏の鉄道地図に新しいページが加わります。JR大阪駅北西側の新しい開発ゾーン「大阪駅(うめきたエリア)」(本コラムでは「うめきた駅」と表記します)が、3月18日のダイヤ改正で開業。うめきた駅からは関西国際空港が乗り換えなしで結ばれます。うめきた駅は将来、大阪のキタとミナミを結ぶ鉄道新線「なにわ筋線」の北側の起点の役割も受け持ちます。なにわ筋線の開業予定は8年後の2031年です。

なにわ筋線をめぐるホットな話題では、阪急電鉄が2022年末、なにわ筋線と自社線をつなぐ新路線、新大阪ー十三―うめきた駅間の新大阪連絡線となにわ筋連絡線(いずれも仮称)を、なにわ筋線と同じ2031年開業に向けて整備する方針を表明。関西鉄道界の未来を象徴する、鉄道プロジェクトへの期待がふくらみます。本コラムは、うめきた駅やなにわ筋線の歴史とプロフィールをご紹介。プロジェクトで何がどう変わるかを、解き明かします。

大阪駅から関空や南紀に直行

最初に基本を確認しましょう。JR大阪駅は線路は高架上、線路下に駅舎がある構造です。西側(神戸方)の地上部分に線路が走っていて、これが東海道線の支線です(梅田貨物線の通称で呼ばれます)。

この支線、元は貨物専用線でしたが、JR発足後の1988年から旅客列車も運転。支線を経由すると、新大阪―支線―西九条(大阪環状線)―天王寺のルートで、新大阪から阪和線や大和路線(関西線)への直通運転が可能になります。

支線には現在、空港特急「はるか」と、南紀特急「くろしお」が運転されます。「はるか」を利用すれば、新大阪から関空に直接アクセスできますが、在来線の大阪駅からの直行は不可能。梅田貨物線は、大阪駅のそばを通っていても駅がないからです。

そこでJR西日本は、貨物線を約1.7キロ地下化して、地下区間に大阪駅を拡張(大阪駅とうめきた駅は規定上は同一駅で、拡張部分がうめきた駅です)。うめきた駅から「はるか」や「くろしお」で、関空や南紀に直行できるようにします。

大阪―関空間を20分短縮、和歌山も”1時間切り”

ここで、うめきた駅のスペック。地下2階ホームは2面4線、コンコースは地下1階です。大阪駅は北西側に新改札口(地上1階)を暫定開設。うめきた駅への移動には6~10分程度掛かりますが、改札を出ることなく乗り換えられます。

うめきた駅に停車するのは、「はるか」が1日60本、「くろしお」が同じく36本。昼間時間帯の大阪駅から関空への平均所要時分は、「はるか」利用で47分になり、現在の関空・紀州路快速に比べて20分短縮。大阪から和歌山への「くろしお」は、所要57分と1時間を切ります。

おおさか東線の列車も乗り入れる

うめきた駅には関空や南紀特急だけでなく、おおさか東線の列車も乗り入れます。おおさか東線は、新大阪と久宝寺を結ぶJR西日本の路線。多くの区間は、学研都市線(片町線)の貨物支線・城東貨物線を旅客線化して、2019年3月までに開業しました。

3月18日のダイヤ改正から、おおさか東線の直通快速上下各4本と普通上下各67本がうめきた駅に直行。直通快速は、ダイヤ改正から新しくJR淡路に停車します。大阪―奈良間は天王寺回り(大和路快速)と新大阪回り(直通快速)のダブルルート化されます。

うめきた駅から新しい価値創造に挑戦

JR西日本は、うめきた駅を起点に新しい価値創造に挑戦するプロジェクト「JR WEST LABO」をスタートさせます。

鉄道ファン要注目は、うめきた駅の設備かも。列車の扉位置に応じて開口部を自在に変化するフルスクリーンホームドア(21番線ホーム)や、駅利用者の動きやニーズに合わせて案内する「デジタル可変案内サイン」などが登場します。

大阪市の「市営モンロー主義」

ここから、うめきた駅が起点になる鉄道新線・なにわ筋線をご案内します。

なにわ筋線の話に入る前に、触れておきたいキーワードが「市営モンロー主義」、さらには大阪の都市構造です。鉄道がネットワークを拡大した20世紀初頭、大阪市が打ち出したのが「市内の鉄道は大阪市がすべて建設、管理・運営する」の指針。これが市営モンロー主義です。

大阪市の都市構造はキタの梅田(JRは大阪駅)、ミナミの難波(心斎橋や天王寺も)の南北二極構造ですが、双方を結ぶのは地下鉄御堂筋、四ツ橋、堺筋、谷町の地下鉄4線。市営地下鉄の交通独占は、市外から市内への移動で、必ず途中駅での乗り換えが必要になるなど課題もありました。

「2005年までに整備するのが適当な路線」

そうした状況の打開を目指して構想されたのがなにわ筋線。大阪市中心部を南北に貫く、なにわ筋の地下に建設される鉄道新線で、大阪圏の鉄道整備方針を示す1989年の運輸政策審議会答申に「2005年までに整備することが適当な路線」として登場しました。

なにわ筋線は1999~2000年度、2009~2011年度の2回にわたる国土交通省の調査などを経て、2017年に大阪府、大阪市、JR西日本、南海電気鉄道、阪急電鉄の5者(社)が共同で、早期事業化を目指すことを確認。2021年10月に工事に本格着手というのが、これまでの流れです。

なにわ筋線の整備(建設)区間は図の通りで、うめきた駅―西本町間(JR・南海共同営業区間)、西本町―JR難波(JR営業区間)、西本町―新今宮(南海営業区間)に3分割。建設延長は7.2キロ(地下6.5キロ、堀割・盛り土0.3キロ、高架0.4キロ)、「Y」の字を逆さまにしたような線形です。

なにわ筋線の路線図。大阪駅とうめきた駅は結節して描かれます。駅名は一部仮称です(資料:JR西日本)

なにわ筋線はうめきた駅で梅田貨物線、JR難波で大和路線(天王寺でJR阪和線に接続)、新今宮で南海本線にそれぞれ接続。大阪駅と関西国際空港が直行ルートで結ばれます。

大阪市の試算では、総事業費3300億円、利用見込み1日24万人。途中駅はうめきた駅方から中之島、西本町(いずれもJR、南海共同営業区間)、新難波(南海営業区間)の3駅(駅名はいずれも仮称です)を設けます。費用便益比(B/C)は開業30年で1.40、開業50年で1.59で、いわゆる元が取れる計算です。

整備方式は、第三セクターの関西高速鉄道が第三種鉄道事業者として施設を整備。JR西日本と南海が第二種鉄道事業者として乗り入れます。

阪急が2本の連絡線を2031年に整備

ラストは2022年末に表面化した、阪急によるなにわ筋線関連の新路線整備の話題。阪急は新大阪―十三間の「阪急新大阪連絡線」と、十三―うめきた駅間の「なにわ筋連絡線線」を、なにわ筋線と同じ2031年開業を目指して建設する方針を表明しました。

阪急新大阪連絡線は、建設延長2.1キロで建設費590億円、なにわ筋連絡線は2.5キロで870億円。建設費は2線の単純合計では1460億円になりますが、同時整備すれば150億円減の1310億円に抑えられる見込みです。

阪急は線路幅1435ミリの標準軌ですが、なにわ筋線と相互直通する2本の連絡線は1067ミリの狭軌で建設します。阪急が連絡線を建設する狙いは、新幹線のほか自社線の京都嵐山や兵庫県宝塚、神戸方面などと関空間の鉄道アクセスの利便性を向上させるためです。

阪急はどんな空港特急を走らせるのか?

国交省の2018年需要調査では、2線同時整備の場合の1日輸送人員は阪急新大阪連絡線が約4万7000~5万6000人、なにわ筋連絡線が約11万4000~13万1000人。費用便益比は1.7~1.9です。

以上は2022年末時点での情報でまとめた、うめきた駅やなにわ筋線の概要。これから8年後ですが、鉄道ファンなら阪急(直営でなく子会社や別会社の可能性もあるでしょう)が、どんな空港特急を走らせるのかなどファンの夢がふくらみます。夢のスタートライン・うめきた駅の開業まで、残すところ2ヵ月余。期待して待ちたいと思います。

記事:上里夏生

※2023年1月14日15時11分……費用便益比に関する記述を一部修正いたしました(鉄道チャンネル編集部)

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