十日恵比須

 佐世保の正月の風物詩といえば、2日の早朝に中心部のアーケードで始まる初売りだった。まだ真っ暗な中、各店舗の前には多くの人が並び、開店を待った。掘り出し物を求めて、かつては佐世保だけでなく、県北や佐賀県からも買い物客が訪れていたという▲100年以上の歴史があり、伝統行事ともいえる初売りだったが、大型店など、元日から営業を始める店が増え、数年前から一斉に行う早朝初売りは姿を消した▲早朝初売りはなくなったが、佐世保にはもう一つ新年の伝統行事がある。亀山八幡宮で1月10日に行われる十日恵比須大祭だ。商売繁盛などを祈願する恵比須講の輪が広がり、1929年に始まった▲戦時中の中断を除き、続いてきた行事だが、往年の活況が薄れつつあった。そこで、地元経済界の有志が佐世保恵比須会をつくり、2005年に抽選会が中心だった内容を刷新し、出し物や餅まきなどイベントを充実させた▲今年の大祭は、新型コロナウイルス対策で餅まきはできなかったが、平日にもかかわらず、大勢の参拝客でにぎわった▲早朝に始まった大祭は昼過ぎに終わる。「来年はもっと盛り上げよう」。恵比須会のメンバーはこう誓って解散した。ただ続けるだけでなく、さらに活性化させようと意気込む地元有志の思いが伝わってきた。(豊)

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