「火星探査は新時代、研究が熱い」惑星火山学者の野口里奈さん 古里福井県で講演、南極調査の成果も紹介

火星の火山研究について語る野口里奈さん

 小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトにも携わった惑星火山学者で新潟大学自然科学系助教を務める野口里奈さん(35)=福井県坂井市出身=の講演会が1月14日、福井市自然史博物館分館セーレンプラネットで開かれた。火星にある火山の研究や初期の火星と似ているとされる南極での調査成果を紹介し「火星探査は新時代を迎えている。火星研究を盛り上げていきたい」と熱く語った。

 野口さんは、宇宙について学んでいた大学時代、語学留学で訪れたハワイで火山溶岩を見て心奪われたとし「宇宙も火山も両方知りたいという欲張りな気持ちから火星の火山を研究することにした」と語った。

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 火星にある直径600キロ、高さ20キロを超える巨大な火山の写真やイラストを見せながら、気温や1年の長さなど地球と火星の違いを分かりやすく解説。2021年にはアラブ首長国連邦や中国が火星に探査機を送り、火星探査の「多国籍化」が進んでいることにも触れ「今後、数十年は火星研究が熱い。福井の興味ある人と一緒に何かできれば」と話した。

 初期火星と環境が似ているとされる寒冷で乾燥した南極の地形や地質を調べるため南極地域観測隊に参加した経験も語った。ドームシアターには、観測船「しらせ」が分厚い氷を割りながら昭和基地に進んだり、調査隊員にペンギンが近寄ってきたりする映像が映し出され、来場者は南極の世界を体感していた。

 来場者との質疑応答で、心がけている研究姿勢を尋ねられた野口さんは「面白そうな話があったらひとまず聞いてみる、『行かないか』と誘われたらすぐ行ってみるというようにフットワークの軽さだけで何とかやってきた。動きまくることでチャンスがつかめる」とアドバイスを送った。

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