新型コロナ陽性者判断センター 平日の利用 わずか1割 長崎県「目標4割」 自主検査呼びかけ

長崎県から送付された抗原検査キット(右)と結果の登録方法を案内するチラシ(写真の一部を加工しています)

 収束の兆しが見えない新型コロナウイルス流行第8波。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に長崎県内の50代男性から「発熱外来が大変になる」と考え、自宅で検査し、療養したと連絡があった。季節性インフルエンザとの同時流行も懸念される中、医療機関の逼迫(ひっぱく)を防ぐために、県は一定の基準を満たした人には男性のように「自主検査をして陽性者判断センターを利用してほしい」と呼びかけるが、その割合は1割程度にとどまっている。

 県は過去の新型コロナとインフルエンザの流行期を参考に、同時流行が起きてピークが重なった場合、1日当たり約1万人の発熱患者が出ると想定。安定的な医療提供体制の構築を目指している。

 爆発的な感染で逼迫が懸念されるのが、発熱患者を受け入れている診療・検査医療機関。過去最多の感染者が出た昨夏の第7波と同様、積極的に患者を受け付けている現場からは「通常の診療に影響が出始めている」との声が上がる。

 県は新型コロナ感染者の全数把握簡略化のタイミングに合わせ、昨年9月、陽性者判断センターを開設。県が提供する検査キットなどで陽性だった場合にスマートフォンなどを利用し、検査キットの写真などを同センターに送ることで陽性者として登録される。利用できるのは▽中学生~65歳未満▽基礎疾患などのリスクがない人▽事前に薬を確保している人-などの条件を満たす人だ。

 県感染症対策室の担当者は「仮に1万人程度の発熱患者が出た場合、4割程度の人にセンターを利用してもらわないと、現場は回らなくなると想定している」と話す。ただ、現状は医療機関が休診の日曜や年末年始は約3割に達しているものの、平日は1割程度の利用にとどまっている。

 なぜ利用者が増えないのか。ナガサキポストに連絡をくれた男性は県の呼びかけに応じたものの、「守った人が損をする」「医療機関を受診した方が安心」と感じた。「医療を逼迫させないように協力しているのだから、陽性になった時点でせめて薬を送ってほしい」と訴える。

 県によると、医療機関で診療・検査を受けた場合、その場で陽性が確定すると薬剤費や処方せん料などは公費負担になるという。ただ、確定前の初診料や再診料、院内トリアージ料などは患者負担になるという。

 県の担当者は「高齢者をはじめ重症化リスクの高い人が医療にアクセスできるような体制を維持する必要がある。リスクが少ない人には事前に薬などを用意してもらい、陽性者判断センターを利用してほしい」と理解を求めた。

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