福井県美浜町日向で400年近く続くとされる国選択無形民俗文化財「水中綱引き」が1月15日、3年ぶりに行われた。寒空の下、鉢巻き姿の男衆が運河へ飛び込み、体を真っ赤にしながら綱が切れるまで引き合い、1年間の海上安全と豊漁を祈った。
「わかさ美浜町誌」などによると水中綱引きの由来は諸説あるが、1635年に小浜藩主の酒井忠勝が村の願い出を受けて日向湖と若狭湾を結ぶ運河を開削、完成とその後の豊漁を祝ったのが始まりという。新型コロナウイルス感染防止のため、中止が続いていた。
この日は早朝から近くの稲荷神社に男衆が集合。午後にかけて長さ40メートル、太さ20センチほどの綱を編み上げ、赤い鉢巻き、白い短パン姿で運河に架かる橋に立った。
大漁旗がはためく中、男衆は「いくぞ」と気合を入れて欄干から飛び込むと、15人が東西に分かれて綱を引っ張った。「よいしょー」と威勢のよい掛け声で寒さを吹き飛ばし、10分ほどで綱をちぎった。
日向青年会の高田悠生会長(29)は「物心ついたころからある行事。伝統を絶やさず受け継いでいきたい」と話した。