過去最多の不登校…「無理しないでずっと休んでいい」という言葉、良い訳ではない理由 手が届かぬ先生たち

フリースクール中学部で授業を受ける生徒たち(浦和高等学園提供)

 2021年度の埼玉県内公立学校の不登校者数は、小中学校1万1178人で過去最多を更新した。不登校を経験した児童生徒らが通う浦和高等学園(さいたま市浦和区)を運営する菅野愛也(よしや)学園長は、小学校から登校できないまま中学校に進学することで「不登校の長期化が進んでいる」と傾向を指摘。「学校の先生だけでは手が届かない。民間のフリースクールをどんどん活用すべき」と訴えている。

■長引くほど困難に

 県教育局の公表によると、中学校の不登校7934人のうち前年度も不登校だった生徒は4052人で、半数以上が2年以上にわたり不登校が続いている。90日以上の欠席は4944人で6割を超え、学校内外の専門機関などで相談、指導を受けていない生徒は3割超に上る。

 菅野氏は同学園高校部に通う生徒について「年を追うごとに長期の不登校が増加傾向にある」と指摘する。小学校高学年から中学校までの4~5年間学校に通えていない生徒も1割を超えるという。「勉強が早い段階で止まっていると、不登校が長引くほど取り戻すことが困難になる。人間関係でも、学校に行かないほど人と関わるのが苦手になってしまう」と長期化の問題点を挙げる。

■「認可制」必要

 フリースクールは、学校になじめない児童生徒の居場所となる民間の教育施設で、不登校の児童生徒が多く通う。心の傷や障害のある場合も多く、医療や福祉との連携も欠かせない。運営には専門的な知識が必要だ。

 近年は別分野からの新規参入が増え、eスポーツやアニメなど学校ごとの特色も豊富になった。一方、「課題のある子どもたちへの教育の仕方などのノウハウがない学校や、出欠や学習の記録など、在籍校に曖昧に報告をしてしまうケースもある」という。「子どもたちのためにも、何人以上は中学の教員免許を持つように決めるなど、ある程度縛りを入れた認可フリースクール制度が必要」と考えを語る。

■行政と民間の連携を

 県教育局などは不登校の増加傾向について、「問題行動から理解し受容するものへ変化している」点を理由の一つとして挙げる。一方、菅野氏は「『無理をしないでずっと休んでもいいんだよ』というのが一概にいいとは言えない。本当は勉強がしたい、友達と遊びたいと思い、フリースクールに通うことでできるようになる子どももたくさんいる」と強調する。

 「市や県の教育方針として、不登校になったらすぐにフリースクールに入れるなど民間をどんどん活用し、まずは長期の不登校をなくすべき」と、行政と民間で連携した早期対応の重要性を訴えた。

【浦和高等学園】 星槎(せいさ)国際高校の技能連携校とフリースクールの小中学部を運営。2003年開校。高校部に約100人、中学部に約30人が在籍する。

不登校について語る浦和高等学園の菅野愛也学園長=さいたま市浦和区

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