芥川龍之介・菊池寛による『不思議の国のアリス』幻の名訳が、約100年の時を超えて「完全版」として復刊!

書籍『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』が、2023年2月にグラフィック社より発売される。 もし『不思議の国のアリス』を日本の文豪が翻訳したら? そんな夢のような構想が現実となったのが、1927年刊行の『アリス物語』。芥川龍之介と菊池寛による訳文は実に上品でリズミカル。キャラクターはいきいきとユーモラスに描かれ、今なお色あせない魅力に溢れている。

『アリス物語』の原書には脱落箇所などの不足な点がありましたが、本書ではそれらを小説家で芥川研究者の澤西祐典が補い、史上初の「完全版 アリス物語」として甦らせた。

さらに、充実の注釈と解説つき。物語以外の部分も楽しめる。注釈では、芥川と菊池ならではの翻訳の工夫やこぼれ話を、解説では、翻訳当時の様子や背景について図版をまじえて紹介している。

また、1900年代前半に活躍した英国の挿絵画家、マーガレット・タラントの挿絵をオールカラーで約45点掲載。 『不思議の国のアリス』をはじめて読む方にもおすすめできる一冊だ。

著者プロフィール

著者:ルイス・キャロル

1832年生まれ、1898年没。イギリスの作家、詩人、数学者、論理学者、写真家。イングランド北西部チェシャー州で牧師の長男として生まれる。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン。作家として活動する際にルイス・キャロルのペンネームを用いた。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』のほか、『スナーク狩り』『シルヴィーとブルーノ』など数多くの作品を遺した。

翻訳:芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)

1892生まれ、1927年没。小説家。『羅生門』『鼻』『藪の中』『河童』などの作品が広く知られている。『蜘蛛の糸』『杜子春』といった児童向けの短篇も執筆。英文科を出た芥川は古今東西の文学作品を読み漁り、自身の創作の糧とした。1927年7月24日、「ぼんやりした不安」という言葉を遺して服毒自殺し、社会に大きな衝撃を与えた。のちに親友で文藝春秋社主の菊池寛が設けた「芥川龍之介賞」(芥川賞)は、直木賞とともに日本で最も有名な文学賞として現在まで続いている。

翻訳:菊池寛(きくち・かん)

1888年生まれ、1948年没。小説家、劇作家、ジャーナリスト。実業家としても文藝春秋社を興し、「文藝春秋」の創刊や、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わる。同人誌で発表した戯曲『父帰る』が舞台化をきっかけに絶賛され、その後、面白さと平易さを重視した新聞小説『真珠夫人』などが成功をおさめる。文芸家協会初代会長などを務め、“文壇の大御所”と呼ばれた。

訳補・注解:澤西祐典(さわにし・ゆうてん)

1986年生まれ。小説家、研究者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。 編訳に『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(柴田元幸氏との共編訳)、小説に『フラミンゴの村』(第35回すばる文学賞)、『文字の消息』、『雨とカラス』などがある。ジェイ・ルービン編、村上春樹序文の『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』に短篇作品が採録されるなど、国際的にも評価されている。研究者としての専門は日本近代文学、比較文学。国際芥川龍之介学会会員、日本ルイス・キャロル協会会員。龍谷大学国際学部講師。

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