終末時計

 その「時計」が誕生したのは1947年、東西冷戦時代の始まりの時期だ。最初に針が「7分前」を指して始まったのは「見た目が良さそう」というデザイン上の理由だったそうだ▲核戦争や気候変動などの危機や脅威を分析し、「人類滅亡」の時刻に見立てた真夜中の0時までの残り時間を発表する米科学誌の「終末時計」。針が10秒進んで、残り時間は創設以来最も短い「90秒」になった▲針が進んだ一番の要因は、ロシアのウクライナ侵攻とこれに伴う「核使用の切迫感」だという。中国の核戦力拡大や北朝鮮の弾道ミサイル発射も懸念要素-と昨日の紙面にある▲そのウクライナ情勢では「戦車」が新たなキーワードになっている。ドイツが自国製の主力戦車をウクライナの求めに応じて供与すると発表し、米国のバイデン大統領も同調することを表明した。「エーブラムスは世界で最も能力の高い戦車だ」▲ウクライナにとって戦車は「領土奪還の切り札」なのだという。ただ、ロシアは当然、ドイツや米国の決定に強く反発している。ウクライナに提供される戦車は、終末時計の針をどちら向きに動かすのだろう▲原因をつくったのはロシアだ。それははっきりしている。それでも、戦う道具を各国が融通し合う状況への素朴な抵抗感を忘れずにいたい。(智)

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