インフレ鈍化でなぜ債券投資が注目されるのか−−魅力あるタイミングはいつまで?

2023年も1ヵ月近くが経過しましたが、今年も値動きが激しく難しい相場だと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

改めて2022年からの流れを振り返ると、インフレの度合いが高まり、それを抑制するための各国中央銀行の積極的な利上げにより、多くの資産クラスにとって2022年は厳しい環境で、運用が難しい年だったと言えます。しかし、2023年はその流れが変わってきたと市場で考えられており、それに伴い債券に対して投資家の需要が高まるのではないか、と考えられています。

なぜいま債券に注目すべきなのか、その理由といつまで債券に魅力がありそうか、債券に投資できるETFについてもお伝えしていきます。


インフレは鈍化の兆し

2022年は債券相場も大きく下落しました。米国債券の利回りは1年前と比較して大幅に上昇したことで債券の価格は下落しており、バリュエーションが魅力的=割安となっていることが、まず債券に注目すべき理由です。

チャートを見ると、10年物の米国債利回りは2022年秋につけた4.231%をピークに下落していることがわかります。そしていま、債券投資に魅力がありそうな大きな理由しては、2023年に入って米国インフレの鈍化を示す経済指標が続いていることです。

2023年1月6日(金)に発表された2022年12月の米雇用統計の結果は、失業率は予想3.7%に対して結果は3.5%、非農業部門雇用者数は予想20.1万人増に対して結果22.3万人増(前月は速報値26.3万人増→25.6万人増に下方修正)となり、平均賃金が前月比予想0.5%増→結果0.3%増、前年比予想4.9%増→結果4.6%増と、賃金が予想を下回っています。雇用者の賃金が下がるということは、生産や販売などに対してコストが下がることにつながるので、インフレ鈍化を示す結果となります。

同じく1月6日(金)発表の12月の米ISM非製造業景況感指数も49.6と好不況の境目とされる50を20年5月以来で割り込んできており、1月12日(木)に発表された米12月CPI(消費者物価指数)は、前月比0.1%下落、前年同月比6.5%(コア 5.7%)と、総合コアともに市場の想定通りの結果となりました。 前月は7.1%で前月と比べても下落しており今回で6ヵ月連続の下落となっています。

これらの指標からインフレはピークアウトに向かっている−−つまり、インフレ鈍化を表していると読み取れます。

市場ではインフレが持続的に鈍化し、去年は0.75%のトリプル利上げを4回も実施したFRBが、年内にも利下げに踏み切るとの見方が広がっています。これから米企業の決算発表が本格化してきますが、1月16日週に発表されたゴールドマンサックスや保険のトラベラーズの決算は軟調、全体としてもマイナス成長が予想されるなかで、リセッション(景気後退)が意識される決算の結果となれば、金利が上がらないということも考えられます。

債券と金利の関係性

ここでインフレが鈍化してFRBが金利を下げるかもしれないことと、債券の価格がどう関係があるのかをお伝えします。

そもそも債券とは、資金を調達したい国や企業などが債務者(借り手)となって発行する有価証券で、投資家は債権者(貸し手)となること、定期的に利息を受け取れ、満期になると元本が戻ってきます。代表的な債券が国債ですね。

債券の価格は、将来金利がどう変化するかの予想、期待感に基づいて形成されます。例えば、債券発行時の利回りが5%の場合、金利が上昇して8%になったとすると、債券の利回りのほうが低いので魅力を感じにくいです。一方、金利が下がり2%になったとすると、債券の利回りのほうが高いので魅力的に見えるのではないでしょうか?

つまり、債券価格と金利は逆相関の関係性があると言えますので、将来、金利が下がると予想されている時には、債券の利回りは上がります。債券の利回りがあがり、魅力が増すため、価格は上昇するとみられます。そう考えると、インフレが鈍化してFRBが金利を下げると、米国債券の買いに優位性が出てくる、ということですね。

それでは、実際に債券に投資をする場合はといいますと、まず海外の発行体が日本で発行する円建て債券である「円建て外債(サムライ債)」が選択肢となるでしょう。取り扱いのある証券会社から購入することが可能です。またETFでも債券に投資することは可能です。債券ETFの一つ、iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)(2621)を紹介します。

iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)は、償還残存期間が20年を超える米国債に投資をすることで、FTSE米国債20年超セレクト・インデックス(国内投信用 円ヘッジ円ベース)という、償還残存期間が20年を超える米国債で構成され為替リスクを回避しつつ円建てで投資する際のパフォーマンスを表す指数に連動する投資成果を目指す、ブラックロック・ジャパン社が運用するETFです。

外国債券に投資する場合は、為替レートも考慮する必要がありますが、iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)は、この為替レートの変動による影響を低減することを基本としています。投資初心者の方にとって、為替レートの変動をあまり考えなくていい、というのは嬉しいポイントなのではないでしょうか。

それでは、いつまで債券投資に魅力があるのかといいますと、私は2023年前半くらいかなと考えております。

サービス価格のインフレなど、粘着性があるので持続するとされる指数は今なお上昇しています。深刻な人手不足もあって、2023年前半にはインフレ改善が進んだように見えても、早まって金融政策を変更してしまうと、1970年台のようにインフレが長引いてしまうという可能性もFRBは考えているのではと思います。そうなると、市場が思っているよりも利上げ停止のタイミングが早くない可能性があり、その場合、債券には逆風となりますのでご注意ください。

「23年は債券の年になる」という方もいらっしゃいますが、政策やチャートの値動きも見ながら、適度に利食いをしていく方がよいのではないかと思います。

1月23日週「相場の値動き」おさらい

1月27日(金)の日経平均株価は、前日比19円81銭高の2万7,382円56銭と小幅に反発。1月20日(金)の日経平均株価は2万6,553円53銭でしたので、週間では829円03銭の上昇となりました。

米国でも決算が本格化しています。

気になる企業の決算を簡単にお伝えしますと、1月24日(火)の引け後に発表されたマイクロソフトの決算は、EPS が$2.32と予想を上振れた一方で、売上高は$52.75Bと予想をやや下振れ。あまり良い内容とはいえないことで、他のIT大手の決算への警戒感が高まりました。

テスラの決算ではEPSが$1.19と予想上振れ。過去最高の売上高、純利益で市場予想を上振れる良い決算でした。

経済指標では2022年10-12月期の米実質国内総生産(GDP)は前期比2.9%増と前回から減速したものの、市場予想を上回りソフトランディング期待が高まっているよう。FRBの利上げペースがどうなるのか、1月31日(火)・2月1日(水)のFOMCに注目です。

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