相続手続きの書類と負担を減らせる!「法定相続情報一覧図」って?

「法定相続情報一覧図」を活用すれば、相続手続きの際、戸籍等の書類を提出する必要がなくなり、負担が軽くなります。どんな場合に有効なのか、作成の仕方や注意点を、行政書士が解説します。


平成29年から始まった「法定相続情報証明制度」って?

平成29年5月から、全国の法務局において、各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まりました。

相続手続では、亡くなった方の戸籍等の書類を取得し、金融機関や法務局などに提出する必要があります。法定相続情報証明制度は、亡くなった方の戸籍等の書類を法務局に提出し、併せて相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」を出すことで、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付する制度です。

法定相続情報一覧図の写しを活用することで、亡くなった方の戸籍等の書類を提出する必要がなくなります。

何に活用できるのか

法定相続情報一覧図の写しは、各種相続手続きで使用することができます。

・相続登記
・預金の払い戻し
・有価証券の名義変更
・相続税申告
・年金手続き など

従来は、このような手続きにはすべて戸籍関係書類原本が必要でした。

たとえば、複数の金融機関で相続手続きをする場合、金融機関に戸籍等原本を提出し、金融機関の確認後に原本が返却され、次の金融機関へ持って行くことの繰り返しで、時間も日数もかかりました。

平日に休みが取りにくい場合は、郵送でのやり取りになり、さらに日数がかかり手続きに数カ月かかることもよくありました。時間を短縮するためにと、同じ戸籍を複数取得して金融機関に同時に提出する方法もありましたが、1通450~750円かかるので、かなりの費用負担でした。

手続きするのに、時間とお金、どちらの負担を選ぶのかを考えることも多々ありましたが、それが戸籍関係書類原本の代わりに法定相続情報一覧図の写しの提出で手続きができるようになりました。

金融機関側としても、たくさんの戸籍を読み相続関係を確認していく作業が、法定相続情報一覧図によって省略することができるので、お互いに時間短縮になり手続きがスムーズに進むことが多くなってきたのです。

どんな人にメリットが大きいか?

この制度は、亡くなった方が、複数の金融機関との取引があり、不動産も所有するような場合には、メリットが大きいでしょう。しかし、相続財産が預金1行のみの場合には、時間と手間をかけて法定相続情報一覧図の写しを取得する必要性は低いです。

また、この制度を利用できないケースもあります。例えば、亡くなった方や相続人の一部に外国籍の方がいる場合や、出生時までの戸籍が完全にそろっていない場合などには、利用することができないので、注意が必要です。

利用のステップを解説

ここからは、法定相続情報証明制度を利用する際の流れを説明しましょう。

【STEP1】必要資料の収集
まず、下記の必要資料を収集し、この資料の原本を法務局に提出する必要があります(下記以外にも書類が必要になる場合があります)。

(1)被相続人(亡くなった方)の戸除籍謄本(出生から亡くなられるまでの連続した戸籍謄本及び除籍謄本)
(2)被相続人(亡くなった方)の住民票の除票
(3)相続人の戸籍謄抄本(相続人全員の現在の戸籍謄本又は抄本)
(4)申出人の氏名・住所を確認することができる公的書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票記載事項証明書等)

「法定相続情報証明制度を利用すれば戸籍等はいらない」ということについて、勘違いされている方が多いのですが、初めから戸籍等が必要ない訳ではありません。つまり「法定相続情報証明制度を利用すれば“今後は”戸籍等の提出はいらない」ということなのです。

【STEP2】法定相続情報一覧図の作成
STEP1で収集した資料を参考に、相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を作成します。これは、亡くなった方が誰で、相続人は誰になるかを一覧にした図です。作成方法については、A4の丈夫な白紙に記載することで手書きでも明瞭に判読できるものであれば可となっています。

【STEP3】申出書の記入・法務局へ申出
申出書に必要事項を記入し、STEP1・STEP2の資料と併せて管轄する法務局へ提出を行います。法務局へ直接持参することもできますし、郵送での請求も可能です。

なお、請求を行ってから受領までの期間は、管轄する法務局によっても異なります。申請をしてみた感覚では、平均して約1週間程度かかることが多いです。

手数料など、よくある質問

次に、よくある質問を紹介しましょう。

【手数料はかかる?】
法定相続情報証明制度は、無料で利用できます。ただし、STEP1で必要となる戸除籍謄本については、ご自身で収集する必要があります。

【戸除籍謄本は返却される?】
提出した戸除籍謄本は、一覧図の写しが交付される際に返却されます。

【一覧図は再交付してもらえる?】
提出された法定相続情報一覧図は、法務局において5年間保管されます。その間、いつでも再交付することが可能です。ただし、再交付ができるのは「申出人」として氏名を記載した方です。

事前に戸籍関係の書類を集めておくことで負担が軽減

法定相続情報証明制度を活用することで、相続手続きが楽になる可能性が高い方々も多くいらっしゃいます。相続が発生した際には、ご自身の相続手続きにとって必要であるかをまず検討してみるといいでしょう。

また、法定相続情報証明制度を活用するか否かに関係なく、相続において戸籍関係書類は必ず必要になります。その中でも、除籍・改製原戸籍などは有効期限がありません。相続発生後に戸籍などを集めるのではなく、生前から戸籍関係の書類を集めておくことで、かなりの負担が軽減されます。集めた戸籍を家族で見ながら、先祖の話をするのも家族のルーツを知る良い機会になります。ぜひ、お元気なうちから戸籍を集めておくことをお勧めします。

行政書士:細谷洋貴

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