ホモロゲ登録後も改良は続く。アキュラ、LMDhソフトウェアの“継続的な開発”で信頼性が向上/IMSA

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権とデイトナ24時間レースのディフェンディングチャンピオンであるメイヤー・シャンク・レーシング(MSR)。同チームのドライバーとチームオーナーは、アキュラARX-06のソフトウェアについて、ホモロゲーション取得後も「継続的な開発」が行われていると語った。

 LMDhのライバル陣営と同様に、アキュラの新型プロトタイプマシン『アキュラARX-06』はホモロゲーションによって5シーズンにわたって開発に制限が掛かる。これは、その間にメーカーやチームが物理的な設計変更、アップグレードを行うことができないことを意味する。

 しかし、ARX-06の開発元であるホンダ・パフォーマンス・デベロップメント(HPD)とシャシーパートナーのオレカは、アキュラの2.4リットルV6ツインターボエンジンと共通仕様の電気モーターに関連するソフトウェアの更新作業を継続することができる。

「MSRチームの共同オーナーであるマイク・シャンクは、「オレカとHPDが継続的に改善を試みているシステムがクルマに搭載されている」と述べた。

「クルマに載せてからトラックに出る前に外すこともあった。なぜなら、電子機器の面で何かがうまく機能しなかったからだ」、

「非常に多くのプログラミングが必要で、多くの部門が互いに話し合い共通の製品を考え出さなければならない。電動分野の人たち、ICEの人たち、パフォーマンスの担当者がいて、彼らは皆トラックでクルマを走らせようとしている。全員がコミュニケーションを取らなければならないんだ」

「パフォーマンス面の話ではない。信頼性の話をしている」

 DPiに替わる新しいクラスであるGTPの最初のレースは、この“信頼性”が大きなテーマとなる。参戦するLMDhメーカー4社は、24時間を戦い抜くために自分たちのマシンがどの程度持ちこたえられるのか確信を持てないでいる。さまざまな電子制御システムのバランスをとることも、信頼性の一部だ。

 2度のデイトナ24時間ウイナーであるエリオ・カストロネベスは、「テクノロジーが非常に多く、小さな文字をひとつ変えただけでそれがすべてにつながっていく」と語った。

「(開発は)僕たちがトラックに出るたびに彼らが改良し、更新しているソフトウェアだけだ。これらは今後も続く小さな作業であり、僕はそれが継続的に行われていると考えている」

メイヤー・シャンク・レーシングの60号車アキュラARX-06

■ドライバーとアキュラ/HPD間にある好循環

 2023年デイトナ24時間のポールシッターで、IMSA DPiのチャンピオンでもあるトム・ブロンクビストも、「ハードウェアは完成しているが、ソフトウェアは継続的に開発されている」と述べた。

「僕たちはトラックで走るたびにそれを微調整しながら学んでいる。我々はこのイベントのために大きな一歩を踏み出したが、(予選を含む公式テストセッションが行われた)先週から(レースウイークの)今週にかけても、まだそれを少しずつ進めているところだ」

 ブロンクビストとタッグを組んで2023年のフルシーズンを戦うことになったコリン・ブラウンは、ソフトウェア開発プロセスにおけるドライバーの役割について、次のように説明した。

「ドライバーとしての学習が進むに連れて、アキュラとHPD側が提供してくれるツールのいくつかを利用することができるようになった」とブラウン。

「それによって僕たちはより良いフィードバックをすることができ、彼らはより良いツールを提供してくれるという、絶え間ないループができた」

「HPDとアキュラは、僕らが言ったことをクルマに実装し僕らがより気分良くドライブできるようにするために素晴らしい仕事をしてくれている」

■話題の大部分は信頼性について

 シャンクのチームは、ロレックス24・アット・デイトナのポールポジションを獲得し、先週末のロアでは6回のテストセッションのうち4回をリードして、ウェザーテック選手権におけるタイトルを防衛するキャンペーンをスタートさせた。

 しかしドライバーたちは、すべてのメーカーがレースに向けて警戒している信頼性の未知数な部分を考慮し、序盤戦の速いペースを当たり前のこととして考えていない。

 ブロンクビストは、「ほとんどの話題は、信頼性についてだね」と語った。

「それが最大の関心事になったのは、何年も経ってから初めてのことだ。我々は非常に良いクルマを持っている点で素晴らしい立場にある」

「ただし、僕たちがそう感じることができないくらい(全体を見ても)未知数なんだと思う。(他社陣営を含めて)僕たちは皆その中にいるんだ。とても奇妙な感じだね」

“助っ人”ドライバーであるカストロネベスは、「パフォーマンスに関しては、ここには大きなチャンスがある。アキュラはとても強そうだ。でも、新しいクルマだから何が起こるかわからない」と付け加えた。

「僕は強いと感じているし、チーム全体も同じように感じていると思う」

「でも、ちょっと、できれば考えたくないが……未知の状況だからね」

ロア・ビフォア・ロレックス24(公式テスト)内の予選でポールポジションを獲得したトム・ブロンクビスト(60号車アキュラARX-06)

© 株式会社三栄