人間国宝の勝城蒼鳳さん死去 竹工芸、栃木県大田原市在住

人間国宝の勝城蒼鳳さん

 栃木県大田原市在住の竹工芸家で重要無形文化財保持者(人間国宝)の勝城蒼鳳(かつしろそうほう)さんが28日午後2時3分、病気のため那須塩原市内の病院で死去した。88歳。本名は勝城一二(いちじ)。自宅は大田原市市野沢。通夜は2月1日午後6時から、告別式は同2日午前11時半からともに同市若草1の1498の1、JAアトラス大田原ホールりんどう式場で。喪主は長男竹幸(たけゆき)さん。

 1934年、高林村(現那須塩原市)生まれ。15歳から竹細工師菊地義伊(きくちよしい)さんに基礎を学び、後に竹工芸家八木澤啓造(やぎさわけいぞう)さんに師事。68年の日本伝統工芸展初入選を機に「蒼鳳」の号を用い、作家としての道を歩み始めた。その後も斎藤文石(さいとうぶんせき)さんに5年間師事した。

 生まれ育った故郷の豊かな自然や四季折々の身近な情景をテーマとし、自身のイメージを表現するために新しい技法を考案。「千集編(せんしゅうあ)み」と呼ぶすっきりとした線によるダイナミックな花、2色に染め分けた柾割(まさわり)材の「引っかけ編み」で文様化した水の動きなど、伸びやかな造形、豊かな表情で竹工芸の可能性を広げていった。

 3年前、自宅玄関で転倒し大腿(だいたい)骨を骨折。自作のつえを突きながらも制作を続けた。昨年秋の日本伝統工芸展には、自宅近くの麦畑から飛び立つヒバリに着想を得た「雲雀(ひばり)の里」を出品した。

 72年日本工芸会正会員、98年紫綬褒章受章。2005年重要無形文化財「竹工芸」保持者認定。20年には県立美術館の企画展「竹の息吹き」で作品や足跡が紹介された。

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