できなかった“勘違い” 蝉川泰果が米ツアー3連戦で得たもの

PGAツアー屈指のロングコースで4日間を戦い抜いた(撮影/田辺安啓(JJ))

◇米国男子◇ファーマーズインシュランスオープン 最終日(28日)◇トリーパインズGC サウスコース(カリフォルニア州)◇7765yd(パー72)

蝉川泰果をコースで取材するのは昨年10月「日本オープン」以来のことだった。大会95年ぶりのアマチュア優勝、史上初のアマでツアー2勝を成し遂げてから約3カ月。「ソニーオープンinハワイ」から始まったPGAツアースポット参戦3試合目を前に「だんだん“うつ”みたいになってきますね」と苦笑いした。口調は冗談めかしていても、やはり自信が揺らいでいるように映った。

直前の「ザ・アメリカンエキスプレス」では予選ラウンド3日目に9バーディを奪った。悔しいダブルボギーはあった中で「66」を出したが、「(フィールド全体では)それが“普通”みたいな感じでした」。通算10アンダーのカットラインとは5打差があった。週が明けて、さらにタフなセッティングとなるトリーパインズGCでの戦いということもあったかもしれない。

ショートゲームを含めた課題と向き合っていく(撮影/田辺安啓(JJ))

本場でしのぎを削る選手たちを見回し、ショートゲームのレベルの高さに衝撃を受けた。グリーン奥のショートサイドに外してもパーを拾う。スピンを利かせる場面、クッションを使う場面といった引き出しの多さ。もちろん勉強になる一方で「なかなか苦戦しているので、(自分は)どうしたらもっと良くなるかって考えますよね、やっぱり。2日、3日でできたら、みんなうまくなれちゃうんですけど…。考えることが、もっとシンプルになってくればいいな、と」。考え込む時間が増え、どこか気持ちも沈みがちになっていたようだ。

昨年11月にプロ転向し、PGAツアーは「ソニーオープン」が初めてだった。キャリアの入り口と分かっていても、全てを経験と割り切る気はなかったという。「ファンとして(傍から)見ていたら、『いい経験をしているな』って思うかもしれない。でも、出るからには少しでもいい結果を残したい。自分の中でも“いい勘違い”をできたらなって思うんです。(ある程度)いけるんや、みたいな。それは結果を残すことでしか得られない」

2月には東南アジアで欧州ツアーに出場予定(撮影/田辺安啓(JJ))

初日128位から巻き返して予選を通過した「ファーマーズインシュランスオープン」は、最終日に「79」と崩れて67位で終えた。パッティングの復調を感じられたものの、飛距離では十分通用する1Wの精度の部分、アイアン、アプローチで課題を突き付けられたと振り返る。

PGAツアーの高い壁は、やすやすと“勘違い”を許してはくれなかった。日本オープンの鮮烈な印象も含めてエリート街道を歩んできたイメージも強いが、アマの大舞台や国内ツアーでの活躍で2学年上の金谷拓実や同学年の中島啓太に先を越されたことが原動力となってはい上がってきた蝉川でもある。ほろ苦い思い出も残した3週間は、さらなる飛躍へのスタートラインになる。(カリフォルニア州ラ・ホヤ/亀山泰宏)

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