MITリンカーン研究所、市販のドローンにトロイダルプロペラを搭載しテストを実施。プロペラによる風切り音を低減

トロイダルプロペラは以下のような特徴がある。

主な特長

  • 人間が最も感受性の高い周波数帯のノイズを低減
  • 消費電力や重量を増加させる補強部品を必要とせずノイズを低減
  • 回転するプロペラが、ドローンの軌道上にある物体や表面を切断、捕捉、またはクリップする可能性を低減
  • マルチロータードローンに匹敵する推力を実現
  • 積層造形での確実な製造が可能であり、様々なマルチローター用プロペラのカスタマイズが可能

このトロイダルプローラーにより、小型のマルチローター無操作飛行機(ドローン)は、プロペラ形状を持つ現在のドローンに比べ、より静かに飛行することができるようになったという。このプロペラの採用により、音に煩わされないドローンが実現できれば、空輸、映画撮影、工業・インフラ検査、農業モニタリングなど、幅広い用途でドローンの普及が加速することが期待されるとしている。

DJIのクアッドローターで使用されている従来のプロペラ(a)とトロイダルプロペラ(b)の比較。トロイダルプロペラの方が騒音が大幅に低減されていることが分かる

課題

ドローンと呼ばれる小型の遠隔操縦航空機は、宅配便、空撮、ビデオ撮影など、さまざまなサービスに利用されていいる。ドローンは、製造・運用コストが低く、二酸化炭素排出量も少ないため、商業サービスにとって魅力的だ。ドローンは、都市部や渓谷、災害地などの狭い場所でも飛行することができるため、従来の無人機の代替手段として注目されている。

ドローンの活用を制限している要因のひとつに騒音がある。2017年にNASAラングレー研究センターによって行われた音響心理学実験では、小型マルチロータードローンによる騒音は、他の交通機関による騒音よりも高い感度を示した。プロペラがより静かであれば、一般市民もドローンを受け入れ、商業的に採用することができるとしている。

解決方法

静かなトロイダルプロペラは、2枚のブレードから構成されている。片方のブレードの先端がもう片方のブレードに食い込むようにループしているという。この閉形式構造によりブレードの先端で発生する空気のトンネル(渦)による抵抗効果を最小化し、ブレードの強度を高める。ブレードの先端で発生する渦による抵抗効果を最小限に抑え、プロペラ全体の剛性を高めることができるのだという。

そして、これらの特徴によりプロペラの音響特性を低減することができるとしている。試作したトロイダルプローラを市販のクアッドコプターに搭載したところ、従来のプロペラと同程度の出力で騒音レベルの低減により、人間の聴覚に負担をかけることなく、通常の半分の距離で人間の聴覚に負担をかけずに飛行することができたとしている。

▶︎MITリンカーン研究所

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