ジョーダン・スピースはなぜペブルビーチで1Wを替えたのか

タイトリスト「TSR2」をテストするスピース(Jed Jacobsohn/Getty Images)

ジョーダン・スピースのショットを繰り出す創造性は、彼がゴルフコースを攻撃的にプレーすることを可能にしつつ、物事がうまくいかない場合はトラブル回避の手助けとなっている。しかし、その創造性は用具変更を敢行する際、試練となることもある。

ドライバーを例に挙げよう。タイトリストのツアーフィッターであるJ.J.バンウェゼンベックによると、スピースはホールレイアウトやコースコンディションにより、少なくとも5つの弾道を打ち分けている。現在のゴルフでは、これほどのショットメークのバリエーションは珍しくなりつつある。

「多くのウィンドウへ打ち分ける選手は、年々少なくなっています」。バンウェゼンベックは水曜日、ペブルビーチでGolfWRX.comに語った。「特定の打ち出し角とスピン量で一定の初速にマッチさせる上で“ハードに振って、高いカットを打つ”という手法は、選手間でかなりポピュラーになっています。ジョーダンにはフェアウェイを捉えるショット、中弾道のカット、より高弾道のカット、さらには中弾道のドローとハイドローがあります。従って、多くのウィンドウに対して適したスピン量や打ち出し特性を合わせなければなりません。これは面白味のあるチャレンジですね」

大勢のPGAツアーの選手仲間と異なり、スピースにとってのドライバー変更は、単純に決まった単一のショットに対してスピン量や打ち出し角、初速を最適化するプロセスではないのである。スピースは持ち球全てに対し、打ち出しに関する数値を最適化しなければならない。

過去数年間、スピースはタイトリストTSi3ドライバーを頼りにしてきた。2021年に一般向けに発売された物で、スピースのバッグには2020年から収まっていた代物である。TSi2モデルと比較すると、TSi3は若干低弾道で、若干スピン量が少なく、よりコンパクトな形状で、操作性に優れたモデルとなっている。

昨年9月、タイトリストはアップグレードされた技術と設計を盛り込んだTSRシリーズを公式に発表した。スピースは「トラベラーズ選手権」で一時的に新しいTSR3モデルに変更したものの、その後、使い慣れたTSi3ドライバーに戻している。

スピースは2017年に優勝している今週の「AT&Tペブルビーチプロアマ」に先立ち、新しいTSR2ドライバーのテストと試行錯誤に着手した。バンウェゼンベックによると、これまでのケースでは、スピースはTSi3やその前のTS3のオプションと比較すると、TSi2やTS2モデルは一貫して避けてきた。彼は“2”モデルのより高い寛容性や全体的なパフォーマンスの効率を認めてはいたものの、アドレス時に見下ろした際のドライバーの形状が気に入らなかったのである。しかし、TSR2ドライバーでは先代たちと比較して形状が変更されたため、スピースは自身の求めるパフォーマンスと好みの見た目をマッチさせることができた。

「彼はTS2を見て形状が気に入らず、TSi2の形状が気に入りませんでしたが、TSR2の形状はとても気に入ったのです」とバンウェゼンベック。「過去にも彼にとって良いパフォーマンスを示してきた製品の形状変更は何かを変えたようで、今では、彼にとってパフォーマンスと見た目が融合した感じになりました。前よりも少し伝統的な形状になっています。ステファニー・ラットレルと研究開発チームはトウの形状設計に多くのエネルギーを注ぎ込み、フラットになり過ぎず、尖ってもいないようにしたので、TSR2は動きのある良い形状になりました。そしてヒール部分は、少し洋梨型になりました。そこまで均一な形状ではありません。高MOI(慣性モーメント)製品ながら、より伝統的な形状をしているのです」

今週ペブルビーチでバンウェゼンベックと作業をする中で、スピースはTSR2のより高い寛容性とスピン量が5種類のショットの効率性を最大化することに気付いた。彼はシャフトにはこれまでと同じ藤倉コンポジット ベンタスブルー6(6X)を引き続き使用しており、新しいドライバーのセッティングで施した調整はシュアフィットホーゼルの設定変更のみだった。スピースはこれまで、10度のTSi3ドライバーを標準的なロフト角・ライ角であるA-1セッティングにして使用していた。しかし、新しいTSR2ドライバーではロフト角を0.75度少なく、ライ角を標準のD-1に設定した。これにより、スピースは完全にウィンドウと合致した弾道を得られるようになったのである。

「我々はこのドライバーで作業をする中で、TSR2の方が彼にはボールが上がりやすいということに気付きました」とバンウェゼンベックは説明した。「スピン量が安定していました。スピンの安定性は非常に重要であり、ドローのショットも空からはみ出したしせず、スピンが急増するようなこともなくなります。我々はTSR2をD-1ホーゼル設定にすることで、彼の好みのフェース角になることを見つけ出しました。これによりスピン量が適正に保たれ、彼のドローやフェードに対するウィンドウが完璧に合うようになりました。ボール初速も本当に素晴らしいのです」

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)

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