「車種」をネタにした日常会話に予期せぬ“落とし穴” 失言ウヤムヤ作戦のカギは卑下&明るい口調

「車種」をネタにした日常会話で何気なくつぶやいた一言によって、相手と気まずい雰囲気になることがあるという。そんな時、あなたならどうする?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、その打開策をお伝えする。

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【今回のピンチ】

後輩女子と外回り中、荒っぽい運転をしているクルマに遭遇。思わず「あの車種に乗ってるのはロクなのがいないな」とつぶやいたら、後輩が「ウチの親、乗ってます」と……。

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たとえばどういう車種かは、具体的に例を挙げると差し障りがあるので、それぞれに思い浮かべてください。

それはさておき、「あのクルマに乗っている人って……」と言われがちな車種は、たしかにあります。気の置けない同士の酒の席などで、話のネタになることもしばしば。偏見といえばその通りですけど、「ケシカラン!」と目くじら立てるのは違う気がします。

ただ、このシチュエーションのように、どこに落とし穴があるかわからないのが怖いところ。後輩女子は、少し落ち込んだ様子で「私、クルマはよくわからないんですけど、そうなんですか……」と言っています。

あわてて取り繕おうとして、「も、もちろん〇〇さんの親は別だよ。比較するとほかのクルマよりもロクでもないのが多いって話だから」と言ったら、さらに泥沼。世間的にはマイナスのイメージで見られるクルマだと、念入りに強調することになります。

そもそも、あの車種はどうだとかこうだとか、実にちっちゃい話です。そこをあえて「たいそうな話」にすることで、失言をウヤムヤにする作戦に挑みましょう。

まずは「ああ、〇〇さん、ありがとう」と感情を込めつつお礼を言います。続いて、

「俺、自分の情けなさに気づいちゃった。荒っぽい運転にカチンと来たからって、車種への偏見を丸出しにするなんて、ホント、ちっちゃくてつまんない男だよね」

こんなふうに自分を卑下します。たぶん相手は、「そ、そんなことないです!」と否定してくれるはず。相手は慰めるのに忙しくなって、イメージが悪い車種なのかなという不安や、もしかしたら抱いているムッとした気持ちを忘れてくれるでしょう。

ただ、ここで終わったら、気まずい雰囲気が残るだけ。顔を上げて、明るい口調で「偏見って怖いよねー。△△△△△△(車種名)に教えてもらっちゃった。ありがとう、△△△△△△!」と〝学び〟を得た喜びを語りましょう。そのさわやかな態度に、後輩女子がキュンと来るかも。

また、そういうふうに言われてしまう車種は、たいてい高級車です。さらに「つい、毒づいちゃったのは、いいクルマに乗ってる人へのヒガミもあるのかな。いやあ、お恥ずかしい」と言いつつ頭をかくことで、人の好さを印象づけつつ、間接的に後輩女子の親の経済力を持ち上げることができます。ま、高級車じゃないと、この手は使えませんが。

クルマの運転も日常会話も、思いがけない「ヒヤリ・ハット」があります。巧みに切り抜けるよりも、危ない状況を招かないほうがはるかに大切。常に的確な状況判断に努めて、安全運転を心がけましょう。

(コラムニスト・石原 壮一郎)

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