小6女子死亡、学校でAED使われず…母親が強調したかった思い全国へ 心停止後1分で10%下がる救命率

全国から訪れた参加者が見守る中、胸骨圧迫を続けながらAED(手前)の装着を準備する児童たち=4日、川越市中原町の市立中央小学校

 学校での突然死ゼロを目指して、日本AED財団は4日、埼玉県川越市教育委員会などと共催で「スクールフォーラム」を開いた。会場となった同市中原町の市立中央小学校には、救命教育に関心を持つ約100人が全国から来場。フォーラムの様子はオンラインでも生配信され、約30人が視聴した。同財団は2018年から、ほぼ年に1回、全国規模のフォーラムを各地で行っており、今回で5回目。

 第1部では、中央小学校6年生による救命教育の授業を公開した。市教委は今年度から、医療従事者の出前授業で子どもたちが自動体外式除細動器(AED)の使い方などを学ぶ取り組みを本格的に開始。同校はモデル校として、活動を推進してきた。

 突然心停止に陥った場合、1分過ぎるごとに救命の可能性は10%ずつ下がっていく。児童は学区内の商店街や公園などで、人が倒れる場面に遭遇したと想定。3分以内に心肺蘇生を行うためにすべきことを各班で話し合い、それぞれの役割を決めた。その後、人形を急病人に見立てて、時間内に胸骨圧迫をしたり、AEDを使用することに挑戦。指導した鈴木敏之教諭は、「一人一人の行動で命が救える。小学生にもできることがあります」と呼びかけた。

 公開授業を受けた細木原亘さん(12)は「もしもの時には、今日学んだことを生かしたい」と誓う。森井結那さん(12)は「ためらわず、勇気を持ってAEDを使おうと思う」と力強く話した。

 第2部のシンポジウムでは、同校教諭をはじめ教育や医療の関係者らが登壇。救命教育について語り合った。

 さいたま市では2011年、当時小学校6年生だった桐田明日香さんが学校で倒れ、校内にAEDを設置していながら救急車の到着前に活用されずに亡くなる事故が起きている。市教委は遺族の協力を得て、「体育活動時等における事故対応テキスト~ASUKAモデル~」を1年後に策定。市内の全校で小学生の頃から子どもたちへの一貫した救命教育などを行っている。明日香さんの母寿子さんは「大切な友達の命を守れば、周りの人の心も救える」と強調。「全ての人の心も体も守る学校と社会を実現するため、ASUKAモデルを全国に普及させたい」と掲げた。

 中学校で21年度から、高校は22年度に始まった新学習指導要領では、AEDを使うなどした救命処置の習得を生徒に指導することを定めている。事故当時のさいたま市教育長で、座長を務めた同財団の桐淵博理事は「AEDに触ったことがない大人が多いのが課題だ」と指摘。「大人も子どもも皆で取り組みましょうよ、と呼びかけてほしい」と、幅広い世代が身に付ける重要性を参加者に訴えた。

シンポジウムで「ASUKAモデル」への思いを語る桐田寿子さん(右)

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