住民みんなで雪山登った後に突然…厄男たちが宙を舞う 福井県鯖江市の奇祭「殿上まいり」

雪の斜面に放り投げられる厄年の男性=2月5日、福井県鯖江市尾花町の禅定神社

 「よし、やるか」の一声を合図に、「わーっしょい」と放り投げられる厄男ら。投げた方も投げられた方も皆、一様に笑顔。福井県鯖江市尾花町の殿上山で2月5日行われた「殿上まいり(でんじょうまいり)」。新型コロナ禍を越え、豪快な厄払いの“儀式”が3年ぶりに復活した。

 午前8時半ごろ、かんじき姿の地元住民約20人が、山のふもとを出発。目指すは標高670メートルの頂上近くにある禅定神社。深い雪に足を取られながら、急な山道を一歩ずつ進む。

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 山の中腹には幹回り約5メートルの杉のご神木がある。ここで、いったん幹に巻かれたしめ縄を交換する。冷たい空気とは裏腹に熱を帯びた体。住民たちは真っ白な息を弾ませ、作業に励む。

 登り始めてから約3時間。ついに神社に到着した。参拝後、たき火を囲んで談笑していると、「そのとき」は突然やってきた。号令が下り、約10人の男たちが一斉に厄男を担ぎ上げて急斜面へ放り投げる。1人、2人、3人…投げたのは延べ13人。その間、雪山に笑い声が響き続けた。

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 この日は天候にも恵まれた。増田憲一区長(53)はみんなの活気あふれる姿に「楽しく厄払いができた」と破顔した。

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