流血の家族…夫婦は庭、娘は玄関先に倒れていた 服に血と灯油が 襲撃して逮捕3度目の男「何のことだか」

ブルーシートで覆われた被害者宅。一帯は今も規制線が張られ、警察車両も止まっている=16日午前、飯能市美杉台

 埼玉県飯能市美杉台の住宅で昨年12月、住民の夫婦と帰省中の長女の3人が殺害された事件で、県警は6日、夫婦の長女に対する殺人容疑で、無職の男(40)を再逮捕した。これまでに夫婦への殺人容疑で送検されていて、逮捕は3度目。また、県警は容疑者方から押収した複数の衣類から灯油成分が検出されたことを明らかにした。住宅内の一部が焼失した形跡があったことなどから、男が3人を襲撃後に住宅を放火した容疑での立件も視野に捜査を進めている。

 再逮捕容疑は、昨年12月25日午前7時10~30分ごろ、住宅敷地内で長女(32)=東京都渋谷区=を鈍器のような物で複数回殴打し、殺害した疑い。死因は左側頸部(けいぶ)損傷による失血だった。調べに、男は「私は事件について何のことだか分かりません。私は犯人ではありません」と容疑を否認しているという。

 この事件では、米国籍の男性(69)と妻(68)も同様の方法で殺害された。県警によると、男が複数の鈍器を使って襲撃したとみられる。男性と妻が庭に、長女は玄関先に倒れていた。

 県警は現場検証や容疑者宅の捜索などを実施。自宅から複数の鈍器と犯行時に身に着けていたとみられる血痕付きの衣類や手袋などを押収し、うち複数の衣類に付着していた血液が親子3人のDNA型と一致したほか、被害者宅の防犯カメラには男が鈍器のような物で家族を襲う一部が映っていたことなど裏付けを重ね、犯行を特定した。

 また、現場宅では複数箇所から出火し、1、2階の計30平方メートルを焼失する火災があった。県警によると、押収した血付きの複数の衣類の一部からは灯油の成分も検出され、住宅の1、2階から出ていた鉱物油反応は灯油と特定できたことも判明した。

 捜査関係者によると、火災現場からは、溶けたポリタンク容器も複数見つかったという。一方で、現場宅には灯油を使う暖房器具はなかったことから、県警は凶器の鈍器とともに容器なども事前に準備して持ち込んだ計画的な犯行とみて、詳しく調べている。

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