世界初 ケニアの新生児のワクチン接種履歴 生体認証で管理 長崎大熱研とNECが開発

新生児の指紋画像採取の様子(NEC提供)

 長崎大熱帯医学研究所(長崎市)とNEC(東京)、ケニア中央医学研究所は7日、生体認証を活用した新生児のワクチン接種管理システムの有用性を世界で初めて確認したと発表した。昨年9月からケニア国内の病院で実証試験を開始。新生児の指紋認証と保護者の声認証を利用して本人確認を行い、接種の履歴と計画を管理する仕組み。
 世界では多くの子どもが幼くして命を落としており、新型コロナウイルスの影響を除いても2020年の1年間で約500万人が5歳までに死亡。このうち約240万人は出生後28日以内に亡くなり、その多くはワクチン接種などの適切な医療で救えた可能性があるという。
 ただ、世界にはインフラ整備の遅れで「誰が、いつ、どこで産まれ、どのような医療サービスを受けたか」などの基本的な情報が手書きで記録されている地域がある。医療従事者は必要な医療を簡単に把握できず、適切なワクチン接種などの働きかけを妨げる要因の一つになっているという。
 こうした課題を解決しようと、新生児期を含む子どもの本人確認を実現する生体認証技術を搭載し、生後24カ月の間に推奨されるワクチン接種の履歴と計画を管理できるシステムを共同で開発した。
 新生児は指紋を精緻に撮像できないことがあったが、NECは左右計4本の指の紋様情報の組み合わせで確認できる技術を開発。保護者の声認証の情報とひもづけることで、新生児の本人確認の精度向上を実現したという。
 実証試験は3月までに保護者と新生児計約千人を対象に実施。ケニア国内での23年中の本格導入を目指し、今後、ケニア以外への展開も検討するという。


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