“直球”の差別

 〈…(賛成者は)影響が分かっていないのではないか。社会のありようが変わってしまう〉〈隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ〉〈やや誤解を与えるような表現で大変申し訳ない。撤回する。完全にプライベートの意見だ…〉▲もう一度、改めて文字に起こすことに抵抗を感じながらパソコンに向かっている。「やや誤解を与えた」の釈明に「またか」と思う。公人の問題発言を、聞こえた言葉の通りに解釈して問題視することを「誤解」とは呼ばないのだ▲「直球の差別発言」と記事にあった。あからさまな嫌悪感がそのまま言葉にされたことに驚く。レコーダーがオンでもオフでも、頭の中で一度も考えたことのない言葉は絶対に口から出てこない。そこが大問題▲性的少数者(LGBT)や同性婚を巡る発言により岸田文雄首相の秘書官が更迭された。秘書官は記者たちとのやり取りの中で「首相に申し訳ない」と述べた。お詫びの方角が違うと感じるのは今さら余計な世話か▲「LGBT理解増進法」制定への動きが国会で広がり始めた。問題発言を契機に新法への機運が高まるという事の経過は歓迎したものかどうか、と首をかしげている▲「帳面消し」のような掛け声倒れの法律には意味がない。人権意識の“現在地”が厳しく問われることになる。(智)

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