妻刺殺の夫に無罪 横浜地裁判決「処罰できない」 重度うつ病に起因する心神喪失認定

横浜地裁

 自宅で妻を刺殺したとして、殺人の罪に問われた被告の無職男性(58)の判決公判で、横浜地裁(鈴木秀行裁判長)は9日、無罪(求刑懲役13年)を言い渡した。

 鈴木裁判長は判決理由で「重度うつ病に起因する幻聴、被害妄想などの症状により、被害者に対する誤った認識や判断をし、認知機能が大きく損なわれていたといえる」とし、弁護側が訴えていた心神喪失を認め、「処罰できない」と結論付けた。

 公判では、事実関係に争いはなく、被告の責任能力の有無と程度が争点だった。検察側は、殺害という目的に向けて合理的に行動していたことなどを理由に完全責任能力が認められると主張していた。

 判決などによると、被告は2021年7月29日、川崎市中原区の自宅で、著しく衝動性が高まった状態で、妻=当時(61)=の胸を包丁で複数回突き刺して殺害した。

 横浜地検の井上一朗次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントを出した。

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