「地域リーグ移籍=事実上の引退」なのか?元JFLの名FW、Jのベテラン監督、彼らが『8部で戦うワケ』

先日、京都サンガFCを退団した大前元紀選手が関東1部リーグの南葛SCへと加入することが決定した。それに対して「地域リーグに移籍することは引退のようなもの」という声もあり、さらに現場の選手やサポーターから賛否両論が相次いだ。

確かにJリーグとは違う環境になり、サッカー以外にも仕事は増える。選手としてのキャリアに専念するという状況ではなくなることは事実だ。しかしながら、それでもアマチュアでサッカーを続けている選手は非常に数多く、彼らこそが日本のリーグのベースを支えていると言っても過言ではない。

今回はそんな、それぞれ違うバックボーンを持っている地域リーグの選手に直撃し、アマチュアの環境でプレーし続ける理由について伺ってみた。

取材したのは「京都FAカップ2023」。京都府の天皇杯予選にあたる大会で、この1次ラウンドでは府リーグを戦っているチームが対戦する。そこで直撃してみたのは、「マッチャモーレ京都山城」というクラブ。

2021年に塚本亮氏によって設立されたばかりであるが、Jリーグ昇格を目指して京都府4部リーグからスタートし、2年連続で昇格を成し遂げている注目の存在だ。

そこでプレーしているのが、JFLのFC大阪に長く所属した名FW塚田卓選手。40歳になってから当時京都府4部のマッチャモーレ京都に加入し、選手兼コーチとして戦うことになった。

なぜ塚田卓選手は京都府リーグでプレーすることを選んだのか?自身は「引退のようなもの」と感じていたのだろうか?伺ってみた。

塚田卓

「いろんなクラブが何千、何万とあると思うんですけど、地域リーグでも『夢があるチーム』があります。それは代表の考え方であったり、地域への根付き方であったりします。それがあるチームは、僕は『いい』と思うんです。

カテゴリーを落とすというのではなく、『そのチームでもう一回上がろう』という気持ちがあれば。少し前のいわきFCやFC今治、またFC大阪もそうですが、地域リーグから勝ち上がっていける。Jリーグから落ちてきた選手が、また這い上がっていける。そのような環境があるチームは素晴らしいと思います。

引退したというのではなく、『そこからもう一度俺を上げてやるんだ』という矢印さえあれば、そこは素晴らしいリーグなのだと思います。

(塚田選手はどうでしたか?)もちろん最初はいろいろな葛藤や悩みもありましたけれども、今はサッカーをしていて楽しいですね!」

また、そのマッチャモーレ京都山城で監督を務めているのは北野誠氏。かつてロアッソ熊本やカマタマーレ讃岐、ノジマステラ神奈川相模原(WEリーグ)で監督を務め、Jリーグで豊かな実績を残している指導者である。

北野誠氏はなぜ京都府リーグのマッチャモーレ京都山城に就任することを決断したのか。その理由を伺った。

北野誠

「(なぜ京都府リーグのマッチャモーレ京都山城に?)

塚本亮代表の考え方がとても面白かったので、それをお手伝いしたい、仲間になりたいなという気持ちがあったんです。

(環境については?)

変わらないですよ(笑)。やることはどこでも変わりませんし、選手たちが一生懸命サッカーをしているので、それを手伝ってあげたいという気持ちが凄く強いです。

(大前選手が地域リーグに移籍したときには批判もありましたが、北野監督はこのカテゴリーについてどのように感じていますか?)

僕はあまりカテゴリーは気にしないので、地域リーグでもJリーグでも一緒ですよ。そしてやれることは多くなります。地域との関わり方についてもそうですね。

何年後かに京都サンガFCとのダービーマッチをやれば南北に分かれたお祭りができる。それが「見たいな」と思っています。

京都って大きいじゃないですか。そこに1つしかクラブがないのは良くないですし、2つあればもっとみんなが盛り上がる。サッカーが盛り上がれば、街自体も盛り上がる。

サンガだけではなく、マッチャモーレというクラブもありますので。ぜひ名前を覚えてください。そして応援に来ていただきたいと思います」

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動画では、彼らとは逆に高校を卒業してから京都府リーグでプレーすることを選んだ久芳友己選手のインタビューも。なぜ社会人での生活にサッカーを加えようとしたのか、その理由について伺っているぞ。

また、次回の記事ではこの京都市消防局対マッチャモーレ京都山城のあとに行われた3試合、城陽シティFC対久御山FC、京都伏見蹴友会対ダスキンフクエ、スフィーダFC対ドン・ファンの選手たちに聞いた「地域リーグを戦う醍醐味やモチベーション」を中心にお送りする予定だ。

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