103歳、川津マシさんの“手作りわらじ” 川棚の赤ちゃんへ「元気に大きくなって」

1歳の誕生日を迎える赤ちゃんにわらじを贈るマシさん(右)=川棚町百津郷

 長崎県東彼川棚町百津郷の川津マシさん(103)は「認知症予防」のために、布製のわらじを作るのが日課。1歳の誕生日の餅踏みに使ってもらおうと、7日、町内の赤ちゃんに手作りのわらじを贈った。マシさん宅は訪れた赤ちゃんの笑顔で和やかな雰囲気に包まれた。
 マシさんは1919(大正8)年3月、同町で生まれた。23歳で結婚し、5人の子を育てた。現在、末娘と一緒に暮らし、ひ孫は16人いる。6年前、姉の土屋イチさん(107)と「合わせて200歳を迎える仲良し姉妹」として本紙などで紹介された。
 わらじを作り始めたのは昨年10月。「作り方を覚えとるやろうか」と思いつつ、民家の棟上げ式で使う紅白の木綿を使って編み始めた。幼い頃、母から教わったわらじ作り。「小学校に行く時分、まだ地下足袋はなく、ランプの明かりでわらを編み、それをはいて学校に行きよった。何十年も作ってなかったのに、ほんと、よう覚えとった」

両手両足を動かしわらじを編み上げるマシさん=川棚町百津郷

 膝の痛みを除けば、健康というマシさん。両足をピンと伸ばし、足の親指にひもを巻き付け、両手を交差させながら編み上げる。1足当たり延べ2時間。「鼻緒の部分を丁寧に仕上げるのがこつ」と話す。自身に玄孫(やしゃご)が生まれ、1歳の誕生日に餅踏みをする日を楽しみにしながら、「どんな大人になるのかな」「ひいばぁばのことを思ってくれるかな」と編み続けている。
 先月、町の広報紙の取材を受け、「みんなに喜んでもらえるのであれば」と地域の子どもたちにもわらじを贈ることにした。7日、町の呼びかけで5組の親子がマシさん宅を訪問。マシさんは赤ちゃんにわらじを手渡し、頭をなで「元気に大きくなり、達者で社会のために尽くして」と声をかけた。「これでまた長生きできる。赤ちゃんのおかげで気持ちがゆったりした」
 次の目標は、姉のイチさんと対面で語り合うこと。イチさんは町内の福祉施設に入所中。面会はコロナ禍でガラス越しに制限されている。「2人で210歳。おかげさまで2人とも、ぼけずにやっている。屋外でもいいから、早く会いたかね」


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