ベルナルド・ラヴァーがシボレーからホンダ陣営へ。今季TCRではトヨタ所属と異例の移籍に/TC2000

 長年にわたって袂を分かっていた旧TC2000との和解が成立し、昨季2022年序盤戦よりシリーズ統合に向け、お互いの選手権を併催しながら再出発を図っている2023年の新生TC2000(旧スーパーTC2000)に向け、ホンダ陣営のプーマエナジー・ホンダー・レーシングが新たなドライバー契約を発表した。

 2021年王者アグスティン・カナピノの強力な“ナンバー2”としてシボレーYPFクルーズをドライブし、昨季もレースでの勝利と2度の表彰台を獲得、ドライバーズランキング6位を獲得したベルナルド・ラヴァーの起用が明らかになった。

 昨季2022年終盤戦となったオスカー・カバレンのレースウイークにて、シリーズに参画するシボレー、ルノー、トヨタ、そしてホンダを含むファクトリー参戦チームの各首脳が集い、2023年以降もシリーズ継続を支持する意向を全会一致で確認したTC2000は、今季を移行期間と位置づけ、将来的に「SUVをベースとした競技車両の技術開発と製造」に取り組む方針を示している。

 そんななか、今季に向けすでにシリーズ2冠を誇るファクンド・アルドゥソ(ホンダ・シビックSTC2000)の残留と、ここまでプライベーターとしてシトロエンC4ラウンジを走らせてきたFDCモータースポーツとの技術提携というジョイント体制をアナウンスしたプーマエナジー・ホンダー・レーシングは、新加入のハビエル・スクンチョ-モーロとともに4台体制を敷くホンダ・シビックSTC2000のうち1台を、2008年から同カテゴリーを戦うラヴァーに託すことを決めた。

「オフのある時点まで、今季のTC2000には出られないと思っていたが、昨年はチャンピオンシップを争っていたこともあり、そのことは本当に残念に思っていたんだ。僕は2008年からスーパーTC2000に参戦しており、本音を言えば離れたくなかった。だから最後の瞬間まで(シート獲得を)決して諦めないと言い聞かせていたんだ」と、胸中を明かしたラヴァー。

 その言葉の背景には、2023年で創設3年目を迎えるTCRサウスアメリカ・シリーズにて、新たに投入される新型『トヨタ・カローラGRS TCR』のエースドライバー契約を結んだことが念頭にある。

 南米大陸でトヨタのモータースポーツ活動を牽引するTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ(TGRA)と、その母体であるトヨタ・アルゼンティーナは、この2022年7月にも複数年にわたって開発を続けてきた『トヨタ・カローラGRS TCR』の正式なTCR認証を取得した。

 すでにアルゼンチンの拠点で本格的な量産体制へと入っており、TGRAは地元TCRシリーズへの正式デビューに際して、TGRA移行前夜の2010年から5年間、STC2000でもトヨタ・カローラでシリーズを戦っていたラヴァーを起用し、新型TCRモデル最初のシートを用意すると表明していた。

Puma Energy Honda Racingは、ここまでプライベーターとしてシトロエンC4ラウンジを走らせてきたFDC Motor Sportsとの技術提携というジョイント体制をアナウンスしていた
2022年もChevrolet YPF TeamのシボレーYPFクルーズをドライブしたベルナルド・ラヴァーは、優勝と2度の表彰台を獲得している
2023年で創設3年目を迎えるTCRサウスアメリカ・シリーズにて、今季より投入される新型『トヨタ・カローラGRS TCR』

■トヨタとホンダのマシンで異なるシリーズを掛け持ちするラヴァー

「ベルニ(ラヴァーの愛称)のような選手の存在は、チームだけでなくカテゴリーにとっても不可欠だ。トヨタに対し、彼が我々と一緒にレースすることを許可してくれるよう、チームとしても可能な限りのことをしてきた」と語るのは、TC2000シリーズでホンダ現地法人のファクトリーチームを率いるロベルト・ヴァッレ代表。

「そして(TOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニア代表の)ダリオ・ラモンダによる非常に素晴らしい契約管理と交渉の後、我々はそれを達成することができたんだ。ファクンド(・アルドゥソ)、ハビエル(スクンチョ-モーロ)、そしてベルニとともに、今季も素晴らしいチームを作ることができると確信している。さらに4番目のシートを占有するドライバーが誰であるかを、速やかに発表できるよう取り組んでいきたい」と続けたヴァッレ代表。

 これで昨季まで所属したシボレーYPFチームから、新たにプーマエナジー・ホンダー・レーシングへの移籍が正式に決まったラヴァーも、引き続きTC2000のシリーズを戦えることに感謝の意を示した。

「少し前に、ロベルト・ヴァッレ代表と(FDCモータースポーツ代表の)ハビエル・チャバッタリ、そしてホンダの人々が僕にチャンスを与えてくれたことでこの可能性が生じ、僕らはともに懸命に働きかけ、今日その実現を確認することができた」と続けたラヴァー。

「このカテゴリーで2016年に一緒に働いたFDCのチームとも、関係を継続できることをとてもうれしく思っている。良い結果が得られると確信しているし、非常にうまく機能するはずさ!」

 そのTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアは、2023年もエースのジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)を継続起用し、昨季ランキング2位を記録した68号車に加えて、ルーカス・ボダノヴィッチとイシドロ・ヴェザロという2名の若いチームメイトを抜擢。

 そして昨季シリーズ3部門完全制覇を成し遂げたルノー陣営のアクシオン・エナジー・スポーツSTC2000は、自身2度目のシリーズ制覇を達成した最年長王者リオネル・ペーニャに、デビューイヤーで鮮烈な活躍を演じた17歳の新鋭イグナシオ・モンテネグロ(ルノー・フルーエンスGT)らを擁し、2月24~26日にブエノスアイレスのオスカー・ファン・ガルベスで開幕の日を迎える。

引き続きTOYOTA GAZOO Racing YPF INFINIAからTC2000に参戦するジュリアン・サンテロ(トヨタ・カローラSTC2000)
デビューイヤーで鮮烈な活躍を演じた17歳の新鋭イグナシオ・モンテネグロ(ルノー・フルーエンスGT)も、ルノー陣営のAxion Energy Sport STC2000残留と、TCRサウスアメリカ新規参戦を決めている
昨季、自身2度目のシリーズ制覇を達成した最年長王者リオネル・ペーニャも体制維持で臨む

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