<南風>湯たんぽ

 2020年の5月から、兵庫での単身赴任生活が始まった。22年4月からは沖縄と兵庫を行き来する生活となり3回目の冬を迎えている。そんな私が愛用するのが湯たんぽである。

 暖房機器をつけっぱなしで寝ると、乾燥で喉がやられてしまう。そのため、布団の中に湯たんぽを入れ、もうおまえには頼らんぞ!と言わんばかりに暖房機のスイッチを切るのだった。このように、道具とは人々の生活を便利で豊かにしてくれるものだ。しかし、AIの台頭は、人々の生活を豊かにすることを通り越して、仕事を脅かす存在になる可能性を秘めていると言われている。

 実際にスーパーなどの小売店でも無人レジが目立つようになったし、ガソリンスタンドで店員を見る機会も減っている。このようにAIやロボット工学が発展すると職業を奪われる人々が発生してしまう。しかし、本当に人々は職業を奪われてしまうのだろうか。

 実は、歴史的には何度も人々は機械に仕事を奪われてきた。最初に機械に仕事を奪われたのは18世紀にイギリスで起こった第1次産業革命である。蒸気機関の発展に伴い、工業化や機械化が進んだ。そのことにより繊維産業も拡大していくが、それまで手作業で綿から糸を紡ぎ、布を生産していた人々は機械化により職を失ってしまった。

 しかし、同時に新しい仕事も生まれている。大量の布が出来上がることで、ミシンを使い、服を作る仕事が生まれる。また、そのミシンを製造する職業も新たに必要となる。このように機械と人間のバトルは決して未来の話ではないのだ。

 30年後の未来は、想像できないような職業が生まれているはずだ。とはいえ、私の単身赴任生活も今年か来年が最後かと思うと、少なくとも今足元で私の布団を暖めている湯たんぽには劇的な変化はないだろう。

(神谷牧人、アソシア代表)

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