LMDhでは「BoPが議論されることは少ない」とポルシェ。WECとIMSAでは“基準”にわずかな違いも

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツでマネージング・ディレクターを務めるジョナサン・ディウグイドは、LMDhでは技術規則がより締め付けられ、すべてのマシンがより小さなオペレーティング・ウインドウに収まったことから、BoP(性能調整)は「議論の一部ではなくなっている」と考えている。

 1月のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦デイトナ24時間レースでGTPクラスにデビューした2023年の新たなプラットフォームは、4メーカーすべての車両が同じ最低重量、出力、エネルギー使用量に設定され、レースが行われた。

 アキュラARX-06が最速ラップを記録し、ライバル勢よりも明らかに優位に立ったものの、4メーカーの最速レースラップタイムはコンマ4秒未満の差しかなかった。

「正直なところ、LMDhとGTPの規格は総合的に見て、人々にとって比較的“小さな箱”を作るという面で、かなり良い仕事をしていると思う」と、ディウグイドは24時間レースを前に記者団に語った。

「他のマニュファクチャラーからは、BoPを気にする人が少なくなってきているとの情報も入ってきている。それは真実であり、本当のことだと思う」

「パワーも重量も似ているし、空力的なレギュレーションもかなりタイトだ」

「チームからのコミュニケーションでも、BoPが話題に上ることは少なくなってきており、我々は皆、レースに向けて前向きになってきているよ」

デイトナ24時間でレースデビューした4台のLMDhマシン。ポルシェ963(左手前)、アキュラARX-06(右手前)、BMW MハイブリッドV8(右奥)、キャデラックV-LMDh(左奥)

 ル・マン・ハイパーカー(LMH)の性能レベルを織り込んでいるにもかかわらず、ウェザーテック選手権とWEC世界耐久選手権では、BoPテーブルが異なることを予期しているとディウグイドは語っている。

 IMSAのテクニカルディレクターであるマット・クルドックは、昨年のDPiのようにトラック単位で調整を行う可能性があると語っている。一方、WECでは引き続きローリング・レース・アベレージを使用する予定であるという。

「IMSAとACO/FIAという2グループの間では、オープンなコミュニケーションが行われている」とディウグイド。

「このふたつのグループでは、異なるスケジュールが組まれることになると思う。基本的に、両者はレースカレンダーも異なっているしね」

「IMSAのアプローチは、彼らが過去に行ってきたこととほぼ同じになるだろうし、WECのアプローチは少し異なるだろう。少なくとも最初の段階では、LMHマシンとLMDhマシンのバランスをとるのに、少し異なる課題があるはずだからだ」

 LMDhマシンの技術仕様も、空力検証テストの違いから、ふたつのシリーズ間で若干の違いがあるという。

 IMSAはノースカロライナ州コンコードにあるウインドシア社の風洞をGTPクラスのマシンに使用する一方、スイスのザウバーの風洞がWECハイパーカークラスのマシンには使用され、それぞれのシリーズでBoPなどを定める際の基礎データを得ている。

 ディウグイドは、ポルシェ963がすでにWECによる風洞セッションを終え、FIAとACOにホモロゲーションを提出し、最終的な承認を得ていることを認めた。

 LMDhプラットフォームの初年度に両選手権に参戦するもうひとつの車両、キャデラックV-LMDhが、現時点でWECのホモロゲーションを取得しているかどうかは不明である。

2023年IMSA開幕戦デイトナ24時間に02号車として出場した後、2号車としてWECにフル参戦するキャデラック・レーシングのキャデラックV-LMDh

「これらふたつの風洞は微妙に違うが、それは彼らが全マニュファクチャラー測定するために使用している尺度だ」と、ディウグイドは説明する。

「風洞を基準にすると、空力的に若干の違いが出てくるんだ」

 何が違うのか、という質問にディウグイドは「クロージングパネルと、肉眼で確認できるいくつかのもの」と答えた。

「今現在は、小さな断片的な違いがある。劇的に違うとは言わないが、わずかな違いがあるんだ」

 ポルシェは、WECの最終仕様でサーキットでのテストを行っていない状態で、開幕戦セブリング1000マイルレースへと臨む。来週、セブリングではIMSA公認テストが行われるが、そこではシリーズの規定に従いウェザーテック選手権仕様の車両で参加することになっている。

LMDh勢のなかで、デイトナではやや劣勢だったBMW Mハイブリッド V8。WECへは2024年から参戦予定

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