女性向けのコスメ売り場を歩くと、目に入ることが増えてきた「フェムテック」という言葉…。
― フェムテックって言葉をご存じ?
「知らないです」
「えっ、なんですか? 聞いたことないです」
街で聞くと必ずしもみんなが知ってるわけではありませんでした。今回のテーマは、「重要なキーワード? フェムテックってなに??」。女性だけの問題でなく、「みんなゴト」として考えてみませんか?
ー さっそくですが、「フェムテック」という言葉をみなさん、聞いたことありますか? 2012年ごろから使われ始めた造語なんですが、女性(Famale)と技術(Technology)の2つを合わせて「フェムテック」といいます。
どういう意味かといいますと、生理や妊娠・不妊・更年期障害・婦人科の病気など、女性が抱えるさまざまな悩みを解決するための技術や製品・サービスのことを指します。
女性の社会進出が進む今の社会でさまざまな課題に向き合っていくうえでも注目されているキーワード「フェムテック」を取材しました。
生活雑貨を扱う「ハンズ広島店」を訪ねました。女性向けの美容コーナーの一角には、フェムテック専用ブースが設けられています。
ハンズ広島店 松井彩香 さん
「フェムテックについては2021年ごろからメディアなどでよく見たり、聞いたりするようになって、関東・関西とかの百貨店とかで専門のコーナーができることもあって、うちでは2022年の3月ごろ、コーナーを作りました」
フェムテックとして新たに商品を取り入れたわけではなく、店内にばらばらにあった商品を「フェムテックコーナー」として集めて販売することにしたのだそうです。
こちらは、洗って繰り返し使える「布ナプキン」(1540円)です。布で作られていることから体を冷やしにくく、通常の下着感覚で使うことができるそうです。
こちらは、「よもぎ温座パット」(1199円 6回分)です。「ショーツに貼るだけで骨盤のまわりが温められる」とSNSで話題に…。インスタを見せて、「これがほしい」と言ってくる若い女性客もいるそうです。
ハンズ広島店 松井彩香 さん
「フェムテックっていうのを前面に出すというよりも、女性のお客さまが安心して使える商材を中心に、元気になって前向きになる、ポジティブな気持ちにさせてくれるライフスタイルを提案できるようにというところを気をつけています」
人気だというのが、こちら「フェムオンテック温プレートEMS」(9900円)です。電気でピリピリと筋肉を刺激するEMS機能と、温熱の機能でおなかのまわりなど体を温めることができるそうです。
ハンズ広島店 松井彩香 さん
「おでかけのときや寒いとき、リラックスタイム、オフィスなどのデスクワークで体が冷えるというときなどにお好みのタイミングで使っていただけたらと思います」
コーナーができて1年が経とうとしている今、お客さんの反応は…。
ハンズ広島店 松井彩香 さん
「お客さまの目に触れる場所で展開していますが、足を止めて、しっかり手に取って見てくださる方がすごく多くいらっしゃるのと、継続的なリピーターのお客さまも増えていて、フェムテックが浸透してきているなというのは感じます」
◇ ◇ ◇
― 紹介したハンズ広島店だけではなくて、広島県内では広島パルコのコスメ売り場で展開していたり、ゆめタウン廿日市店では3月にイベントを予定したりと、広がりを見せているんです。
一方、女性のこうした健康問題は、本人がどんなにつらくてもタブー視されたり、我慢することが当たり前とされてきたりした状況がありました。
経済産業省によりますと、月経などに関わる症状で女性が仕事中に本来の力を発揮しきれないことによる損失は、年間で5000億円に上るのだそうです。
そこで、こんな動きも出てきています。
広島市に去年4月、オープンしたサロン「ETHOS(エトス)」です。毎週、「フェムテックヨガ」の講座が開かれています。
デリケートゾーンの基礎土台を作ることや女性特有の変化や悩みの解消など、目的はそれぞれですが、参加者が静かに心身を整えます。
参加者
「自分のことを大事にするうえで大事。普通のヨガと使う筋肉が違うので、違った汗が出ます」
インストラクター
「婦人系の病気の方や妊婦さんとか不妊の人とか、そういう人の方が意識している人が多い」
広島市で事業開始3年未満の中小企業の優秀な事業計画に対して経営・資金の両面から総合的な支援をする「創業チャレンジ・ベンチャー支援事業」にも認定されました。
ETHOSオーナー 藤本梨菜 さん
「フェムテックって言葉が広がっている時期なのかなと思うんですけど、サロンに来るお客さんの悩みは生理痛やPMS、たるみとか見た目のお悩みだったり、ゆるみや尿漏れと幅は広いんですけど、みんな、やはり誰でも悩んでしまうものだと思うので、正しいケアや正しいアプローチでケアすれば、改善に向かっていけるので、(フェムテックという言葉を)広げていきながら、お伝えしていきたい」
これから社会に出る若い世代も…。
先月、安田女子大学 ビジネス心理学科のゼミでは、学生たちがフェムテックについて学んだことを発表する場が設けられました。
学生の発表
「(生理で)本当は体も心もしんどい。だけど、毎月、来ることだし、それで休むのはズルと思われるかもしれない、共感してもらえない、過去に受け入れられなかった経験も相まって言い出しにくいからこそ、1人で抱えこんでしまい、無理して出勤したり、学校に来たりする女性がいることが今の社会の現状です」
学生たちは去年、県内企業の女性向けの支援を調査し、企業がフェムテックに取り組む意義について考えてきました。
発表した後は、実際に企業で働いている人たちと意見を交わします。
社会人(男性)
「(女性の部下が)つらそうだと分かっていて、それをつらいと言って、ほかの人に替えてしまうと、それが本人にとっていいのか、悪いのかっていうのがある」
学生
「『おなか痛いから、きょうは学校行かない』というのを聞くと、『わたしだったら我慢できるけど…』と、どうしても思ってしまうことがある」
社会人(女性)
「女性同士で分かってもらえると思って相談すると、『それくらいで』とか、『わたしの時代は』とか…。そこをどうやって打破していこうかというのがある」
これから社会に出ていく学生たち…。「フェムテック」をどう考えているのでしょうか?
学生たち
「フェムテックという言葉があることで、知ってもらい、意識を変えていくきっかけになるので、そのきっかけ作りとして言葉があるのはいいと思う」
― フェムテックは就職活動に影響しそう?
「わたしは結婚や出産したいと思っているので、サポートしてくれる会社の方がいいし、戻ったときもキャリアに集中できるので、そこは重きを置きたい」
「フェムテック」が、現代社会で誰もが知る重要なキーワードになる日も遠くないかもしれません。
◇ ◇ ◇
― 事業者の立場で考えると、個人差がある中でそういうことがちゃんと言える職場を作りたい、働きやすい環境を整えたいと思いますし、家庭では、思春期の男の子が2人おりますので、女性はそういうことがあるんだよというのを折々に伝えていきたいなとも思います。
― 男性の立場で思ったのが、フェムテックって言葉、とても言いやすいんですよね。男性からすると、生理であるとか、更年期とかはちょっと言いにくい部分はあるんですが、フェムテックって本当に言葉にしやすくて、かつ言葉の持つ意味の幅が広いから、少し前のSDGsのようにフェムテックっていう言葉がどんどん世の中に広がっていけばいいなとは思います。
― そのことによって、相談しやすい雰囲気が出てくればいいなと思いますし、例えば就職活動するにしても会社選びの基準がこのフェムテックになるのかもしれないなと思いました。
― 実は経済効果というところにも影響がありまして、経済産業省によりますと、生理や更年期・出産などの女性への影響を調べますと、フェムテックに取り組む経済効果は年間で2兆円に上るとされているんです。
女性にとっても、これは個人差が大きいので、自分の経験が全てではないだけに、女性同士も理解し合うことが必要だと担当者の方は話していました。
― 経済効果もそうなんですけれども、何よりも1人ひとりがやりがいを持って幸せに、そして企業や周りの人の理解を得るという意味でも、こういうものが周知されるといいなというように思います。