「止まらぬ人口減」3年連続ワースト2位 長崎市、手打つも成果見えず

人口減少が続く長崎市。子育て支援に独自性を求める声もある(写真はイメージ)

 米は1日7合。カレーの日にいたっては8合が必要だ。ラグビーに打ち込む小学生と中学生の3兄弟を育てる長崎市の主婦、香織さん(49)=仮名=。最近は野菜も卵も価格が上がり、光熱費も高騰。「正直、家計は大変」。しかも、子どもの成長に伴い増えるのは生活費だけではない。
 大卒でなければいい企業に就職できない-。社会にはまだそんな風潮がある、と感じる。そのレールに乗るため小学生のころから学習塾に通わせる家庭も。香織さんは周囲を見渡しながら「日本社会は教育にお金がかかる仕組みになっている」と嘆く。
 人口減少には、出生や死亡による「自然減」、転出入による「社会減」という二つの側面がある。
 岸田文雄首相が年初に打ち出した「異次元の少子化対策」は、子育ての経済的負担などを軽減し、自然減に歯止めをかける狙い。児童手当や育児休業制度の拡充、働き方改革などが柱だ。同市の女性保育士(47)は政府方針に理解を示しつつ、対策の肝は「育児を手伝ってくれる人が身近にいるかどうか」と指摘する。
 同市も現在、小学生までを一時的に預かる「ファミリー・サポート・センター」事業を展開。業務委託先の市社会福祉協議会によると、共働き世帯が増え、利用件数は増加傾向にあるという。利用料は1時間700~900円。これに対し社協職員の一人は「自然減を緩やかにするには『一時的』な支援より『薄く長く』の方が効くのではないか」と、助成や対象年齢の引き上げなど制度を使いやすくするよう市に求める。

 一方、東京など大都市と違い、長崎市は社会減が人口減に拍車をかけている。総務省の人口移動報告によると、昨年の同市の転出超過(日本人のみ)は2284人。全国の市区町村別で3年連続ワースト2位となった。ついには昨年、推計人口が初めて40万人を割り込んだ。九州の県庁所在地と比較すると、宮崎市に抜かれ、佐賀市に次いで下から2番目となった。

 長崎市は企業誘致や創業支援、移住促進など社会減を抑える手も打ってきた、とする。だが、現状は「目にみえる成果に結び付いていない」(市長崎創生推進室)。特に若年層の転出超過が拡大しており、市の総合戦略には「若い世代に選ばれる魅力的なまち」の実現を掲げる。
 まちづくりに目を向けると、JR長崎駅周辺再開発や長崎スタジアムシティプロジェクトなど「100年に1度」とされる変革期の真っただ中。市は民間の投資意欲も取り込んで魅力向上に努めるが、長崎大経済学部・山口純哉准教授は「ハード偏重」と厳しい視線を送る。
 続けて山口准教授はこう指摘する。「まちづくりだけでなく、経済、子育て、教育も独自性を打ち出せなければ(若い世代への)魅力にならず、中途半端に終わるだけ」。いかに他都市と差別化を図り、人を引きつけるか。それこそ「異次元」の発想が求められる。


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