大学生活に潜むリスクを守る「共済保険」、加入したほうがよい? 保障内容を詳しく解説

受験シーズンを迎えています。合格発表になると、待ったなしに入学準備をすすめなければなりません。大学入学でひとり暮らしを始めるお子さんをお持ちの親御さんにとっては、暮らしの様々なリスクは心配の種です。どのようなリスクに備えればいいのか考えてみます。


大学の共済保険はどんな保険?

日本にはどの位大学があるのでしょうか?

2021年5月1日現在、文部科学省の調べによると、国立大学86、公立大学98、私立大学621、合計805校の大学があります。その内大学生協のある学校は211校。大学の数の約3割にあたり、お子さんの進学先で共済保険の扱いをしている可能性もあるでしょう。

●「学生総合共済」

2021年9月時点で全国211大学生協、約68万人が加入している「学生総合共済」は、名前の通り、トータルに学生生活を支える保険となっています。学生総合共済は、医療保険、傷害保険、本人の死亡保障、親や扶養してくれる人の死亡保障が主な保障です。

例えば、サークル活動中に転倒で複雑骨折し、手術を含め14日間の入院。退院後2ヵ月の間に20日通院した場合。入院1日1万円×14日 手術5万円 通院1日2千円×20日 合計23万円受取ることができ、治療費自己負担分をカバーします。また、学費を払ってくれていた親が在学中に病気で死亡した場合、50万円受取ることができます。学費すべてを賄うことは難しいですが、当面の補助にはなりそうです。

保険料は年間の掛金14,400円。1ヵ月あたり1,200円ですから、この内容の保険料としては大変安いといえます。

●「学生賠償責任保険」

学生総合共済保険は、自分を守る保険ですが、相手に対する賠償として、「学生賠償責任保険」があります。

大学生活では、学業の他にアルバイト、インターンシップなど、様々な場所で多くの人とかかわる場面が増えます。アルバイト先から借りたパソコンを落として破損させてしまった、インターンシップ中に誤って機材を壊してしまった、教育実習中に生徒にけがをさせてしまったなど、賠償責任を負ってしまった場合に、1事故、最高3億円まで賠償に係る費用を支払ってくれる保険です。

相手に対するケガや他人の物に対する保障ばかりではなく、他人のプライバシー侵害や名誉棄損に対する賠償責任や、実習などで発生した感染予防措置や治療に要した費用も保障の対象になっています。

1事故3億円というと、非常に高額なイメージがありますが、自転車による事故で死傷事故を起こしてしまった場合などは、1億円近い賠償請求が出てしまう例もあります。確率は極めて低いかもしれませんが、誰にでも起こりうることで備えておきたい保障です。保険料は年額1,800円です。

●「学生賠償責任保険」の一人暮らし特約

学生賠償責任保険には、上記保障に加えて、住まいの火災などの保障に備える、一人暮らし特約付きのタイプがあります。アパート、寮などに入り一人暮らしをするひとに、大家さんに対する保障や、家財の損害、現金盗難、アパートの修理費用などを保障する保険です。

例えば、留守中盗難に遭い、自宅に置いてあった現金5万円を盗まれたうえ、入り口のドアノブが壊されて修理代3万円かかった場合、合計8万円を受取ることができます。冬期に水道管が凍結で破裂してしまった場合にも、10万円までの上限はありますが、修理代を受取ることができます。初めての一人暮らしには、経済的備えは心強い味方です。保険料は年間8,500円です。

●「就学費用保障保険」

もうひとつ、「就学費用保障保険」という保障があります。学生総合共済の中に親の死亡50万円という保障がありましたが、学業を継続していくためには満足とは言えない金額でした。

現在の国立大学の1年間の学費は535,800円。学費の他に教材費、実習費などもかかってきます。自宅外から通う場合は家賃も含めて生活費がかかりますので、年間の費用は各々違ってきます。

就学費用保障保険は学資を払ってくれていた扶養者が死亡した場合、1口2,600円の保険料で最高25万円まで学費、教材費、家賃下宿代などを払う保険です。最高15口まで加入できるので、国立・私立、文系・理系、など異なる学費に合わせて保険金額を柔軟に設計できる保険です。4年間または6年間、卒業するまでの学資をシミュレーションして口数を設定する仕組みです。

共済保険と重複する保険に入っていないか?

ここまで、大学生協で案内される共済保険について詳しく説明してきました。入学が決まると詳しいパンフレットが送られてきます。近年では、対面で説明を受けることなく、ネットから申込むことが可能です。簡単に加入できますが、申込をする前に、ご自身やお子さんがすでに加入している保険をチェックすることをおすすめします。

説明した通り、共済保険は保険料が安く設定されており、学生の暮らしにフィットした保障内容になっています。ですが、一般の生命保険、火災保険、自動車保険などにすでに同様の保障が付帯されていることがあります。安い保険料とはいえ、入学準備といえば費用がかさむときですので、保障があるものは二重に加入することはありません。

ここからは重複する保険に入っていないかチェックする際のポイントをお話しします。

●学生総合共済

お子さん本人の「医療保険」に加入していないでしょうか? すでに医療保険に加入していれば医療関係の保障は不要です。最近の医療保険は通院保障がない場合も多いですが、ケガの通院頻度はそれほど多くありません。支障はないと思われます。もし、医療保険に加入していないのであれば、大学卒業まで4年間共済加入の選択もありますが、この機会に終身保障の医療保険に加入する選択もあります。20歳前後の保険料はまだ安いですから、がんの手当てなども含め検討し、一生涯のベースをつくっておくのもいいかもしれません。

親御さんの死亡保障はお子さんが独立するまでの遺族保障として、少し大きな死亡保障にすでに加入していませんか? 加入済みであれば不要です。

●学生賠償責任保険

この保障のメインは個人賠償責任保障です。親御さんの「自動車保険」または「火災保険」に個人賠償責任保険または日常生活賠償責任保険という特約が付いていないでしょうか。この特約が付いていれば、親と別居でひとり暮らしをしているお子さんでも、未婚であれば、親御さんの特約が対象となります。

住まいに関する保障については、大学生協を通さず、不動産屋さんでアパートを借りた場合は、賃貸契約時に火災保険を契約していることが多いです。アパート入居時の火災保険には同様の保障が付帯されているはずです。確認してみましょう。

●就学費用保障保険

学生総合共済の親御さんの死亡保障のチェックと同じです。民間保険で、「収入保障保険」があります。お子さんが独立する頃を目安に親御さんに死亡や高度障害、近年では介護状態や病気やケガでの就労不能状態になった時、収入を保障するように月額や年額を支払う保険です。公的な遺族年金の上乗せとして加入する保険ですから、死亡の場合は充分な保障があるのではないでしょうか。

手許の保険証券だけをみても内容がわからない場合は担当者、または引受保険会社に問合わせて確認してみましょう。

学生総合共済だけでも4年間で57,600円になります。大学から送られてくるものは、すべて加入しなければいけないと思ってしまいがちですが、必要なものを選択して上手に加入しましょう。

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