恵みと廻り 玉寄智恵子・琉球WILL代表社員 <仕事の余白>

 社会に出てから、私はつくづく「いい大人」に恵まれているなと思う。

 新卒でOLをしていた頃の話だ。商品をお買い上げいただいたお客様をミュージカルにご招待するイベントが催された。私はその担当となり、全国から集まったはがきの仕分け作業を行った。おそらく数万枚というはがきを地区ごとに並べ、抽選日に向けて何列にも選びやすいように整えていった。ほぼ1人での作業だったため大変だった。

 そして、その抽選日に事件は起きた。当たったはがきの他に、特別にご招待された人がいたのだ。ごひいきのお客様だったのか、取引先だったのもしれない。いずれにせよ、新卒のまだ若く正義感の強い私には理解ができずに、社長に直談判となった。直属の上司に「俺のボーナスが減るから止めてくれ」と言われたが、全く聞き耳持たず、なかなかお会いすることがない社長の机に手紙を置いた。

 数日後、社長からのお誘いで、上司を含めて寿司(すし)屋に連れられて、社長は私の話を「うんうん」と聞いてくれた。どんな回答だったのか、それで納得したのかも思い出せないが、大人が話を聞いてくれた印象はまだ残っている。「何も分からない小娘が」などと言わずに、若い人の意見も聞こうじゃないかという素敵(すてき)な大人に恵まれた。

 今私もだいぶ前から大人だ。仕事では若い人たちとの関わりも増えてきた。時には驚く彼らの話に耳を傾け、寄り添い、「いい大人」にする役割が廻(めぐ)ってきたなと感じている。

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