コロナ患者の葬儀…「袋越し」の見送りから変化 国の制限緩和受けた福井県内の現状

新型コロナウイルス感染後に亡くなった人の遺体を包む袋。厚生労働省は指針を改定し、納体袋を不要とした=2021年2月

 新型コロナウイルスの流行「第8波」で福井県内の死者数が88人(2月9日現在)に上り、2020年3月以降の累計192人の45%を占めている。これまで遺体は「納体袋」に包まれ病院などから火葬場に直接運ばれるケースが多く、遺族は十分に最期の別れができなかった。厚生労働省が今年1月、遺体の搬送や葬儀に関する制限を緩和したことを受け、県内の葬儀会社では遺族の希望に応じて、コロナ禍前の形式に戻す動きが出ている。

 昨年、コロナに感染した祖母を亡くした福井市の40代男性は「入所していた高齢者施設では、面会が制限され、生前に直接会って話すことができなかった。火葬場での袋越しの対面が最期となり、とても切なかった。もっと早く制限を緩和してほしかった」と話す。

 厚労省が1月に公表した改正指針では、納体袋は不要とした上で、接触などに伴う感染を防ぐため、遺体を拭いたり、鼻などに詰め物をしたりといった対策をすれば、基本的にコロナ以外で亡くなった人と同様の対応が可能としている。

 アスピカはくれん事業部(福井市)、法美社(同)は遺族の思いを尊重し、改正指針に沿って感染対策を取り、従来の形式で行っていく意向を示す。嶺北のある業者は「感染した遺体に直接触るのは社員にもリスクがあり、(コロナ下の)対応は難しかった」と振り返る。アスピカはくれん事業部の担当者は「これまでは最期の別れの機会を十分に取れず、申し訳なかった。遺族の思いに寄り添った式を再開していきたい」と語った。

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 厚労省が昨秋実施した全国の火葬場への調査結果によると、感染した遺体の場合、遺族らの入場を認めていないと回答した施設は16%で、収骨は2割が認めていなかった。県内では多くの施設で入場でき、収骨も可能となっている。施設によって異なるが、火葬前に近くで顔を見ることができるケースもある。

 一方、コロナ禍以降、火葬だけで通夜や葬儀がない「直葬」のニーズも増えている。直葬・自宅葬専門の夕葬社(福井市)の利用者は2019年の23件に対し、21年は72件と3倍超になっている。担当者は「単身者や身寄りのない人の増加など社会的な要因が大きいが、コロナの流行も一因とみられる」とし、「通夜、葬儀の簡素化の流れは今後も続くのではないか」とみている。

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