福井にも闇バイト…真夜中に呼ばれ「4tダンプ運転しろ」、報酬は3万円 体験した県内男性「関わったら最後」

「闇バイトの誘惑はそこら中に転がっている」と話す男性=福井県内

 全国各地で相次いだ広域強盗事件の実行役は、交流サイト(SNS)上の「闇バイト」で集められたとされる。福井県内の30代男性は福井新聞の取材に、かつて闇バイトで報酬を得たり、秘匿性の高い通信アプリを使ってやりとりしたりしたことがあると証言した。「悪の誘惑は身近にある。安易に手を出してはいけない」と語気を強める。

 男性は20代後半の頃、仕事がうまくいかず自暴自棄になり、「ワル」で知られた先輩に闇バイトを紹介してもらった。ある日の午前1時、福井県内の指定場所に行くと4トンダンプがあり、そこにいた中年の男から「運転しろ。俺が助手席で指示する」と言われ、すぐに不法投棄の依頼だと感じたという。3万円を受け取ったといい「男の素性も廃棄物の中身も知らない」と振り返る。

 振り込め詐欺で高齢者から現金を受け取る「受け子」の誘いもあったが、報酬2万円と聞いて断った。「誘惑は福井でも当たり前にある」と話す。違法薬物を巡っては、「野菜(大麻)」や「アイス(覚醒剤)」といった隠語を交えたやりとりがあったことを覚えている。

 広域強盗事件の実行役は通信アプリ「テレグラム」で指示を受けたとされる。一定の時間が経過するとメッセージが端末から消える仕組み。闇バイトや薬物絡みのツイッターの書き込みでも多くが「t.me」で始まるテレグラムのアカウントをひも付け、水面下の交渉に持ち込む。男性も使ったことがあると明かし、「闇社会ではずいぶん前から欠かせないツール」。仲間内でも文章を残さずに通話することが原則で、その携帯電話も「トバシ」と呼ばれる他人や架空名義で契約されたものだけを使用していたという。

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 男性は5年ほど前、事故で大けがを負ったことをきっかけに人生を見つめ直し、闇社会と関係を絶った。「兄貴分が義理堅い人で理解してくれた。珍しいパターンだと思う」。通常は不法行為の証拠が漏れないよう、末端メンバーの脱退は困難とされる。広域強盗事件でも、事前に身分証を送らせるなどして実行役を管理し、グループから離脱するのを防いでいたとみられる。

 男性は闇バイトについて「関わったら最後、やめたくても逃れられない。待っているのは恐怖だけだ」。自戒を込め、犯罪に加担しないよう警鐘を鳴らす。

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