新設される「こども家庭庁」への違和感−−本当に危機的状況の少子化を乗り切れるのか?

「こども家庭庁」が2023年4月に発足します。政府が社会全体でこどもの成長を後押しするために創設しました。

こどもの最善の利益を第一として、こどもの視点に立った当事者目線の政策を強力に進めていくことを目指しています。最重要コンセプトとして「こどもまんなか社会の実現」を掲げています。


「こども家庭庁」とは

これまで、こどもを取り巻く様々な出来事を取り扱う管轄が多方向になっていました。

  • 貧困、児童手当、少子化対策=内閣府
  • 保育所、児童虐待=厚生労働省
  • 幼稚園、義務教育、小学校のいじめ問題=文部科学省

一例ですが、この様にバラバラになっている受け皿を一本化し、取りこぼしのないようにしていくために創設されたのが、このこども家庭庁の役割でもあるように思います。

少子化は予想を上回るペースで進む、極めて危機的な状況にあり、児童虐待やいじめ、不登校など、こどもを取り巻く状況も深刻で待ったなしの課題です。令和5年度のこども家庭庁当初予算案(一般会計・特別会計)は、4.8兆円。令和4年度第2次補正予算において前倒しで実施するものなどを含めれば、5.2兆円規模の展開です。

厚生労働省は2022年12月20日(火)、2022年度10月分の人口動態統計速報を公表しました。2022年1~10月の出生数は66万9,871人で、前年同期より3万3,827人減り、過去最少の水準となりました。

このペースで推移すると、2022年の出生数は初めて80万人を割り込み、最新の情報では77万人前後になるのではないかと予想されています。「経済や社会の基盤が大きく揺らいで来る。危機だと言ってもいい」と加藤厚生労働大臣は発言しています。

そんな中、読売新聞が4月に発足するこども家庭庁は、少子化対策の一環として結婚支援の強化に乗り出すと報じています。都道府県に専門知識を持つ「結婚支援コンシェルジュ」を新たに配置するほか、新婚家庭に対する既存の家賃や、引っ越し代の補助制度を拡充します。自治体が独自に取り組む支援事業などを紹介する、特設サイトも開設するとしています。

こども家庭庁の予算案

そこで、令和5年のこども家庭庁の予算案を見ると、詳細の記載がありました。

地域少子化対策重点推進交付金の拡充として、結婚新生活支援事業内容の見直しで対象世帯所得400万円未満を500万円未満へと変更されます。また、交付上限は夫婦共に29歳以下であれば、これまで30万円でしたが60万円になります。

次に「出産・子育て応援給付金」と題して令和5年度、新たに370億円の予算案です。内容を見ますと、妊娠から出産までの期間をニーズに合わせた伴奏型相談支援をするほか、妊娠出産届出時にそれぞれ5万円相当の支援があります。出産育児関連用品の購入・レンタル費用助成、サービスなどの利用に使うことができる内容です。

また、産後ケア事業として、退院直後の母子に対し心身のケアや育児のサポートなどを行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を行う産後ケアの拡充を目指すとしています。

画像:内閣官房「令和5年度こども家庭庁関連当初予算案のポイント」より引用

日本の少子化問題は、1990年頃から問題視され始めました。バブル景気が崩壊した後、ちょうど就職氷河期といわれたのが1990年代半ばから2000年代初め頃で、若年層の非正規雇用が増加しました。一度非正規雇用となると、正規雇用への機会が乏しいと問題になっていた事を思い出します。

また、多く企業で賃金の横這いが、長きに渡り続きました。最近は賃金の上昇の話題も目にしますが、その背景にあるのは物価の上昇に伴うものが多いのが現実です。これでは本末転倒ではないかと常々感じます。働き手が生きていくだけで精一杯の社会では、結婚などなかなか現実的に考えられないのではないかと思います。

政府の子育て支援はギリギリまで追い詰められている感は窺えるのですが、一方でどこか熱の籠りを感じないのは私だけでしょうか? 賃金の安定など補完が成された後に、さまざまな支援が活用されるのではないかと思います。

これから生まれてくるこどもたちや、今こども時代を送っている世代を大切にすることにはもちろん大賛成ですが、現在働いている方たちを可能な限り優遇し、大切にすることも必要なはずです。結婚や子育てには、やはり個々の経済的な安定的上昇が必要不可欠だと思います。

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