安倍元首相回顧録に波紋 「コメントしかねる」予算委答弁苦慮 安倍氏の財務省批判に「官僚への復讐か」 

国会

 故安倍晋三元首相の回顧録(中央公論新社)が国会審議に波紋を広げている。財務省を「省益のためなら政権打倒も辞さない」と名指しで批判するなど内閣のあつれきを暴露したからだ。13日の衆院予算委員会では野党からの確認に鈴木俊一財務相らは「コメントしかねる」「所管外」と言葉をにごすばかり。15日には岸田文雄首相出席の予算委集中審議が組まれているが、関係省庁からは「答弁が用意できない」と悲鳴が上がり、「官僚への安倍氏の復讐(ふくしゅう)」との声も聞かれる。

 この日は河野太郎デジタル相(15区)も標的にされた。北方領土返還交渉で「トップ級の協議は順調だったが、閣僚・次官レベルに下りたらロシアが先祖帰りした」などの記述を巡り、立憲民主党の本庄知史氏から「当時の外相として事実か答えてほしい」などと迫られた。河野氏が「所管外です」と12回にわたり答弁を事実上拒むと、立民の後藤祐一氏(16区)ら野党の予算委理事から「不誠実だ」と怒号が上がった。

 「あなたたちは天下の秀才。思い切り働いてほしいし全ての責任は私が負う」。前新潟県知事で立民の米山隆一氏は田中角栄元首相の大臣就任あいさつを引き「田中氏の評価はさまざまあるが官僚へ責任転嫁はしなかった」と強調。「安倍元総理が指摘した財務省批判は事実か」と鈴木財務相をただした。

 「コメントしかねる」とした財務相は、さらなる追及に「岸田総理は『内閣の下で各省庁をコントロールしあるべき行政を行っていく』などとしてる」と一般論で答弁。あつれきの有無への言及を避け続けた。

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