<社説>コロナ確認3年 対策を明示し混乱避けよ

 県内で新型コロナウイルスの感染者が初確認されてから14日で3年となった。感染対策を含め、県民生活に大きな影響が出た。県内では898人が亡くなられた。幅広い年代の県民の命が失われてしまった。 県は引き続き万全の感染症対策を講じるとともに、傷ついた県内経済の立て直しに取り組む必要がある。

 新型コロナの感染症対策は5月から季節性インフルエンザと同じ5類に緩められる。先駆けて国はマスク着用ルールを3月に緩和し、屋内外を問わず個人の判断に委ねる。しかし、個人任せでよいのか。

 政府は業種ごとのガイドラインの改定を進める。ただ、同じ業種でも対応には違いが出るはずだ。継続して着用を求めるところもあるだろう。

 店舗などでのマスク着用を巡る客同士のトラブルも報じられてきた。マスクを外したくとも店側が着用を促せば、個人は判断に窮するのではないか。個々の責任ともなれば、高齢者ら感染リスクの高い人たちが外出を控えるようになることも想定される。今回の対応によって新たな混乱が生じることを危惧する。

 昨年の全数把握の見直しでも混乱が起きた。都道府県ごとの判断としていた方針を全国一律と転じたからだ。政権浮揚に向けた政権の思惑が作用したとの見方もあった。

 マスク着用緩和についても議長国として開く5月のサミットに向け、政権の至上命令だと指摘される。しかし、政権の思惑でコロナ対策が左右されてはいけない。

 実際、マスクの効果を認める専門家からは今回の方針について疑問が示された。脱マスクの方向性ありきとの批判もあった。政府は今後のコロナ対策の方向性を国民に明示し、混乱を避ける必要がある。

 社会・経済活動を優先した緩和策によって高齢者らの死亡数が増える可能性が指摘されている。医療機関の逼迫(ひっぱく)も念頭に県内の医師からは感染対策の維持を求める声が上がった。経済支援を急ぎつつ、慎重な判断が求められる。

 県内のこれまでのコロナ対応では米軍関係の感染抑止の難しさがあらわになった。米軍内の規制が徹底されていない状況もあった。日米地位協定によって国内法の適用がされないことが背景にある。防疫にも影響が及ぶ地位協定を改定するべきだ。県はこうした経験も踏まえ今後の対策にも当たってもらいたい。

 玉城デニー知事は県議会での県政運営方針で、コロナの影響の長期化で深刻な経済状況にあるとの現状認識を示した。物価高への対応も合わせ緊急かつ機動的に対応すると表明し、主要産業の観光産業の回復、生活再建を必要とする人たちへの支援に取り組むとも述べた。

 コロナ禍の影響などによる自殺者数の高止まりの傾向が県内でも続く。困っている人たちに着実に届く支援を実行してもらいたい。

© 株式会社琉球新報社