衰退進む島原市の商店街 再興へ継続した活性化策を 官民の試行錯誤続く

空き店舗などが増え、人通りがまばらとなったアーケード街=島原市堀町

 空き店舗や更地が点在する島原市中心部のアーケード街。近年、駐車場付き賃貸物件など商業店舗以外への建て替えが目立ち、原則、制限されている日中の車両通行が増加。店舗の連続性が失われ、商店街の魅力が薄らぎつつある。
 こんな現状をため息交じりに話すのは、島原市商店街連盟の鹿田信雄会長(69)。「賃貸住宅と駐車場が年々増え、商店街なのに店が途切れ途切れになっている。アーケード内を通る車が増えれば、イベント時の支障にもなりかねない」
 市中心部には、アーケード街を含め六つの商店街があるものの、どこも人通りはまばら。人口減少や雲仙・普賢岳噴火災害、島原鉄道南線の廃止なども影響し、島原半島内から買い物客が集まってきた最盛期の面影はない。
 「子どもの頃、流れるように人が店の前を歩いていたが、今はネコの方が多い」。市中堀町の婦人服店「たまや」の隈部和幸店長(48)はこう憂い、「過疎化が進み、物件の流動性が低い。行政の補助を受けた新規店が開業しても一時的で、定着しにくいのも問題」と課題を口にする。
 市商工振興課によると、ここ10年の6商店街の会員数は2013年度の計189から年々減少し、22年度は計148。商店街の通行量も1982年度、1日平均約4万人だったが、昨年度は10分の1以下の約3800人まで落ち込んだ。
 そんな中、明るい兆しも出てきた。中心市街地の中核商業施設のイオン島原店(現イオン島原ショッピングセンター)が現地建て替えを終え、昨年3月に再オープンした。
 前身から数えて半世紀近く商店街と共存してきた歴史もあり、商店街の通行量は本年度、1日平均約4200人まで回復。市担当者は「周辺への人の流れができている」と再オープン効果を語り、商店主らは「イオンでの買い物ついでに足を運ぶ人が増えた。地域にある店同士、手を取り合いたい」と声を弾ませる。
 こうした声に呼応するように、活性化に向けた大型店と商店街合同の取り組みも始まった。島原中心市街地街づくり推進協議会は昨年10月、再オープン半年を記念した「まちなか縁JOYフェス」を開催。同センター内に商店街の店舗が出張営業するなど、これまでにない動きが出てきた。
 一方で、継続的な活性化策を求める声も。同協議会の松下英爾会長(68)は「一過性のイベントでは意味がない。商店街全体で協力し、イオン、個人店、行政の連携と継続した活性化策が必要」と提言する。
 これを受け、同センター1周年を記念した同フェスを3月下旬に企画。同センターと6商店街で一定額を購入した人対象の抽選会、キャラクターショーやコスプレイベントも予定する。

拡幅事業が進む現在は一方通行の市道。奥がアーケード街=島原市白土町

 アーケード街内にも新たな息吹が生まれつつある。市が所有する古い町家「旧堀部家住宅」が3月下旬、ワーケーション対応の滞在型施設「水脈(みお) mio」として開業。商店街に接続する一方通行の市道拡幅事業も進み、交通アクセスの向上などが見込まれる。
 鹿田会長は「一商店街だけでは無理。市や団体、若手が一体となり、仕掛けていくことが商店街の再興につながる」と指摘。半島内の市民にとって愛着深い商店街。活性化へ官民の試行錯誤が続く。


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