<農漁業>移住者の就業、定着を促進 2023年度 長崎県予算案点検

新上五島町で漁業の研修を受ける就業希望者(県提供)

 人口減少に比例し、1次産業の担い手不足が急速に進んでいる。県は2023年度、特に移住者の就業・定着を図ろうと、研修や設備導入支援などサポート体制を拡充する。
 県水産業振興基本計画(21~25年度)によると、45年前に4万人を超えていた漁業人口は23年度には1万人を割る見通し。その半数近くを65歳以上が占める。
 県は05年、市町や漁協と連携し就業希望者向けの研修を開始。生活費として最大月額12万5千円を支給し、漁師から技術や漁船の整備方法などを学んでもらっている。北九州市から五島市奈留島に移住し17年に漁師として独立した鎌田祥平さん(45)は「研修制度がなければ、なれなかった」と意義を強調。「一生の仕事にする」と2隻目の船も購入した。
 県水産経営課によると、21年度に県内漁業に就いたのは192人。うち69人が移住者で、その割合は年々増えている。25年度までに210人(移住者79人)に増やす計画だが、移住者は就業後3年で3割強が船を下りているのが実情だ。鎌田さんの周りでも、田舎暮らしや漁業の厳しさが「イメージと違う」と辞めていく人が多いという。
 そこで県は移住者向けの施策を強化する。研修に漁業経営の会計を学ぶメニューを追加。生活費支給も最大13万8千円に増額する。就業後2年間は追加の研修が受講可能とし、漁具など初期経費も60万円を上限に補助する。さらに「受け入れモデル地区」を2カ所設け、地域ぐるみで移住者の生活を支えてもらう。同課は「せっかく長崎に来てくれたのだからフォローしていきたい」とする。
 農業でも、移住就農希望者に特化した情報発信サイトを開設するほか、農業体験付きのお試し移住などを実施。ビニールハウスなど初期投資負担を抑える施策にも取り組む。


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