「一発逆転」狙って… SNSの“闇バイト”応募 長崎で逮捕の男 テレグラムで指示受ける

男は全身黒ずくめで私服警察官を装い、女性からキャッシュカードをだまし取った(写真はイメージ

 昨年10月、長崎市で発生したニセ電話詐欺事件で「受け子」「出し子」役として県警に逮捕された福岡県飯塚市の男(25)。犯罪に手を染めたきっかけは、広域強盗事件と同様、交流サイト(SNS)の「闇バイト」だった。名前も顔も知らない主犯格から通信アプリ「テレグラム」で指示を受けていた。

 県警によると、男が窃盗(払出盗)容疑で大浦署に逮捕されたのは昨年10月28日。逮捕容疑は同10日夕、長崎市内の銀行ATMで他人名義のキャッシュカードを使い、現金計13万円を引き出した疑い。カードは、同市内の80代女性がニセ電話詐欺で盗まれたものだった。
 男の役割は、女性宅でキャッシュカードを受け取る「受け子」と現金を引き出す「出し子」。なぜ事件に関わったのか。拘置中の長崎署で面会に応じた男は、疲れた表情で「とにかく、金が欲しかった」と動機を口にした。
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 男は母と妹の3人家族。高校時代、溶接や製図検定などの資格を取得し、卒業後、船や機械の部品を加工する福岡県内の会社に就職した。月給は手取りで約24万円。決して少ない金額ではないが、母親が金銭管理をしており、自由に使えるのは月に数万円程度。それが不満だった。
 人生の歯車が狂ったきっかけの一つがスマートフォンのゲームアプリ。次々とモンスターを育成し、上位プレーヤーに名を連ねるほど夢中になった。課金を重ね、手持ちの金がなくなれば消費者金融やヤミ金から借りた。気付けば借金は「自己破産を考えるほどの額」に膨れ上がっていた。
 「一発逆転」を狙って手を出したのが高額報酬の闇バイト。昨年9月中旬、SNSのツイッターで探して応募した。依頼主からすぐに返事があり、テレグラムでのやりとりに誘導された。個人情報や顔写真を送った後で初めてバイトの内容を知らされ、ニセ電話詐欺と気付く。だが金が必要だったし、身元も知られてもう後には引けなかった。
 犯行当日。男は全身黒ずくめの格好で私服警察官を装い、長崎市の高齢女性宅へ。ATMで引き出した現金13万円のうち、報酬3万円を懐に入れ、残り10万円はコンビニで電子マネーを買って依頼主にID番号を伝えた。飯塚市の自宅に捜査員が来て、逮捕状を突きつけられたのは犯行から18日後だった。
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 県警の捜査は現在も継続中。警察署の面会室で、闇バイトで集められた実行犯による広域強盗事件について話を向けると、男は「なんでそんなことをするんだろう。実行するかどうかは考え方によるんだろうけど…」。自分とは関係のない世界の出来事-そんな物言いに違和感を覚えた。「(社会復帰したら)汗を流して働きたい」。男はうつろな目をして笑った。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

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